4社9路線が乗り入れる巨大ターミナル、渋谷駅が大きく変わっている。

 東急東横線の駅が地下化し、銀座線のプラットホームが移動した。JR埼京線プラットホームは山手線横に移転したばかり。駅前も再開発が進み、新しいビルが林立している。

 そんな変貌著しい渋谷駅にも都電の時代があった。都電渋谷駅前停留所があった場所は、地下鉄銀座線と首都高速3号線の間だ。線路は3本、そのうち国鉄渋谷駅側の1本は折り返しだ。高架駅時代の東横線渋谷駅の東側で、都電の車両がひしめいている。都電の渋谷駅といえば、このような写真を載せた文献が多い。路面電車としてはかなり大きなターミナルだった。

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1967年の渋谷駅前停留所の様子。中央の電車は6系統新橋行き、奥の電車は9系統。左下の線路の先に34系統の折り返し線プラットホームがあった。ガラス張りの歩道橋の上に地下鉄銀座線が見える ©時事通信社
ほぼ同じ角度で撮影した現在の様子(筆者撮影)
1960年頃の渋谷駅前停留所付近の線路配置図(国土地理院地図を加工)

4つの運行系統が発着した

 渋谷駅前停留所を発着する都電は6系統、9系統、10系統、34系統の4本あった。このうち34系統は折り返し線路を使い、他の3系統は残り2本の線路を使った。おそらく、1本は34系統と同じプラットホーム、残り2系統は島式プラットホームの両側に割り当てられていたと思われる。

 6系統(渋谷~汐留)は宮益坂を上り、青山通りの青山6丁目交差点を右折して骨董通りへ、高樹町から六本木通りを溜池まで進み右折、虎ノ門、新橋を通って汐留に至る。現在の都営バス01系統のルートだ。

 9系統(渋谷~浜町中ノ橋)も宮益坂を上り、赤坂見附を経由して三宅坂を右折、皇居に沿って日比谷、数寄屋橋、銀座四丁目と直進して築地を左折、昭和通りを茅場町へ、隣の新大橋通りへまわって水天宮前を通り浜町中ノ橋に至る。

 10系統(渋谷~神田須田町)は三宅坂まで9系統と同じ、三宅坂で左折して内堀通りを九段へ向かい、靖国通りを東進して九段下、神保町、淡路町を通って神田須田町に至る。神田須田町はJR神田駅と秋葉原電気街の中間にある交差点だ。かつては万世橋駅や交通博物館があったあたり。都バス茶81系統が引き継いだけれど、バス路線も廃止された。

手前が34系統の折り返し線路。奥にある第一生命の看板で撮影場所が推定できる ©共同通信社
ほぼ同じ角度から現在の様子。第一生命ビルは建て替えられて同じ位置にあるけれども、渋谷警察署の高層ビルに隠れてしまった(筆者撮影)