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父親の突然死に「後悔」 脱臭に3日…壮絶な「孤独死の現場」6年で見えた「人間の裏側」

遺品整理人・小島美羽さんインタビュー #2

2020/07/26
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「おれはロレックスの時計を持っている」と語っていた故人

――小島さんが実際に清掃している映像を拝見して、部屋に入っていくとき、写真やビデオで記録していますよね。これはどういう意味があるのでしょうか。

小島 普段はiPadで、最初に部屋の写真を撮ります。スムーズに清掃を進めるために現場の状況を確認する意味もあるのですが、たとえば亡くなった方が生前に「おれはロレックスの時計を持っている」と周囲に言っていて、「部屋にロレックスの時計があるはずだ」とおっしゃる遺族の方がいる。探したけれど出てこなかった。そういう時、もとの現場の様子をお見せするために、細かい部分の写真も撮ります。大家さんが保険をつかって清掃を依頼されることもあるので、そのための写真を提出しなければならない時もあります。

 

――記録写真を見て、ミニチュアを作ることもありますか?

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小島 ミニチュアを作る時、写真を見ることはほとんどなくて全部脳内で作っていますね。映像記憶というか。実際の写真や映像に沿って忠実に再現するというのではなく、わたしの記憶から「あの家はこんな雰囲気だったな」というイメージを思い出し、組み合わせながら作っています。わたしが好きなお菓子の商品名を入れたりもします(笑)。

「亡くなった理由はわからないけれどコロナかもしれません」

――こうして仕事の話を伺っていると、並大抵の決心で続けられるものではないということがよくわかります。特に今年は、新型コロナウイルスの感染拡大によって、これまで以上にリスクを感じることがあったのではないでしょうか。

小島 これは難しい問題で、孤独死の場合、なぜ亡くなったのかはっきりとわかることのほうが少ないのです。まず3月~4月はまったくと言っていいほど依頼がなく、5月から少しずつ増え始め、6月に向かった現場でのことでした。不動産業者の方から「若い方が家の中で亡くなっていて、亡くなった理由はわからないけれどコロナかもしれません」と言われました。

 新型コロナウイルスに関しては、主な感染経路が飛沫感染と接触感染だと言われているので、自分たちが触れてしまった部分は消毒を、手洗いと顔を触らないことも徹底して、特殊清掃の作業を行いました。コロナに感染してしまうと、まるで犯罪者のように報道されることもありましたよね。隠したがるお客様が増えてくると思います。コロナでなくても、部屋で亡くなったこと自体を隠したがる遺族の方は多く、どこか無口だったりする。ただ部屋に入ると特有の臭いがするので、「もしかして中で亡くなられていましたか?」と伺うと、「そうですね」と。確認をするためにこちらからお話を振ることもあります。

小島さんが手がけた「ごみ屋敷」のミニチュア。尿の入ったペットボトルが100本以上あることも。 ©Hajime Kato

 少し意外なコロナの影響もあって、外出自粛期間を使ってご遺族みずから遺品整理をするケースが増えたんです。ある程度遺品整理が終わったところで、わたしたちに一般ごみや処分が難しい大型ごみの処理を依頼される方が増えました。