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「うつが解消することもある」

 山田医師によると、体重が5キロ増減したら、枕の調整が必要な場合がある。ただ、高さを調整する際は、数ミリ単位(最大でも5ミリ以内)での変更に留めないと、逆に首を痛める危険性があるそうだ。

 ちなみに、「高齢者の寝返り」は介護現場でも大きな問題となっている。自分では寝返りを打てない寝たきりの人などは、褥瘡予防のために家族や介護スタッフが定期的に体位交換をする必要がある。実はこれが重労働で、そのために腰痛になる介護職員も少なくない。しかし、山田医師によると、枕を調整して「焼き鳥の串」の睡眠姿勢が保てると「介護者が指一本でゴロンと転がせる」ほど、体位交換もラクになるという。

「玄関マット枕」を使わず、市販の枕を買う場合も、理想の睡眠のためには、前述の3つの条件を満たすものを選ぶべきだ。

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 ただ、「高さ」はともかく十分な「硬さ」があるものを探すのは「非常に難しい」という。そこで山田医師が勧めるのは、「実際に寝て試してみる」ということだ。

「まずは自分にちょうどいい高さがあることを確認してください。さらに、頭を載せた時に5ミリ以上沈み込まない硬さが必要です。それ以上沈み込むと、寝返りが阻害されます」

 そのうえで、バスタオルなどで高さを「微調整」するといいという。

©文藝春秋

 また、「玄関マット」に抵抗がある人に向けて山田医師が教えてくれたのが「座布団枕」だ。最近のクッション性の高い柔らかいものではなく、綿でできた、昔ながらの「せんべい座布団」を土台にして(二つ折りにはしない)、その上にバスタオルを置いて高さを調節して使う。柔らかい枕で寝るよりよほどいいそうだ。

 こうして、枕の選択と調節がうまくいき、無理のない寝返りが打てるようになると、様々なことに好影響が期待できるという。

「姿勢がよくなるので腰痛やいびきの解消にもつながります。全身の血行状態もよくなるので血圧が安定する人もいる。中には睡眠姿勢の悪さから来る不定愁訴がうつ状態を引き起こしている人もいますが、枕を調節しただけでうつが解消することもあるのです。こうした人たちは、医学的には腰痛、睡眠時無呼吸症候群、高血圧、うつ病などと診断されてはいても、実際は『寝具難民』だったのです。枕ですべての症状が治るわけではありませんが、長く治療を続けているのに治らない人は試してみる価値はあるでしょう。また、まだ治療を受けていない人はまず枕を調整して、それでダメならそれぞれの治療を受ける、という流れのほうが無駄はない」

 特にリストの症状がある人は試してほしい。枕を変えれば快適な毎日が送れるようになるかもしれない。

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 続きは『最新予防から発症後の対応まで 認知症 全部わかる!』に収録されています。