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「棺の中にいる人は、本当に母なのか…」欧州“コロナ大量死”の凄惨すぎる現場

2020/10/07

 夏休みが終わり、スペインに新型コロナウイルスの第二波がやってきた。

 ロックダウン解除以降、5月までは全体の約5%に満たなかった15~29歳の若者感染者率が、9月には約25%に達した。PCR検査も増加し、1週間で68万件。首都マドリードは、再ロックダウンの準備に入っている。スペインは、あの第一波の「悲劇」を繰り返すわけにはいかないのだ。

医療ではなく「政治判断のミス」だった

 日本では、感染者も死者も少ないが、それは「ファクターX」のおかげなのか――。

 このような仮説を頻繁に耳にするが、欧州に住む私には違和感があった。なぜなら、それは単純に欧米の数が多すぎるだけであり、犠牲となった高齢者の大半は、病院で治療も受けられずに亡くなっているからだ。

©iStock.com

 スペインやフランスやイギリスで、膨大な死者を生んだ最大の原因は、医療ではなく、むしろ「政治判断のミス」だった。つまり、彼らが病院に運ばれていれば、死者は数千、いや、数万単位で少なかったかもしれないのだ。

 スペインでは、コロナにかかって死亡した約3万人のうち、介護施設で亡くなった高齢者の数が9月末の時点で2万494人に上っている。死者の約70%が、病院搬送されないばかりか、治療も受けられずに施設内で亡くなっていたのだ。

「モルヒネ、モルヒネ、モルヒネ……」

 この事実を報告した全国高齢者介護施設経営者団体のシンタ・パスクアル代表は、スペイン下院議会のコロナ報告会の場で、「私の記憶から二度と消すことができない光景がありました。それはある医師が施設に入ってきて、(一人ずつ指差しながら)モルヒネ、モルヒネ、モルヒネ、と言ったのです」と証言した。

 また、マドリード近郊にあるクリスティーナ王女病院で行われた院内カンファレンスの漏洩動画にも衝撃が走った。上司とみられる一人の医師が、スライドを使いながら、他の勤務医たちに指導をしている光景だった。

宮下洋一氏(ジャーナリスト)

「介護施設の老人の治療は、もう行われていない。もしコロナにかかっているとしたら、それは運が悪かったということ。(中略)症状次第ではなく、年齢次第でICUでの治療を決めていく。これは悲劇で残酷なこと。できればこんなことをしたくはなかった……」

 介護施設の高齢者たちを犠牲にする。そう事前に決めていた。その上、年齢次第で患者の治療を行うか、行わないか、それも事前に決定していたのだ。