文春オンライン

「ワタミは騒がれるまで何もしてくれなかった」ワタミの宅食・営業所長が告発する“二重の裏切り”

note

親切な行為であるかのように勤怠を「修正」

――いつ、残業代の未払いに気がついたのでしょうか。

Aさん 休職にあたって、休暇の申請を確認しているうちに、出したはずの休日出勤記録が消えていることに気がつきました。

 もともと、会社には労働時間短縮の「目標」があり、上司のエリアマネージャーから、残業時間を月30時間以内に抑えるように指示されていました。

ADVERTISEMENT

 もちろん、長時間の残業をしないと、この業務量は片づきません。ですから、私自身も実際の労働時間よりも少なく修正していました。

 ただ、それでも時間がみなし残業時間を超えてしまうこともある。そんなときは、エリアマネージャーから「私がいじります」と、まるで親切な行為であるかのように勤怠の「修正」を宣告されることまでありました。

 ワタミの宅食では、記録した出退勤時間に本社の人間が手を加えられるシステムとなっていました。休日出勤記録の消去も、そこで行われていたのだと思います。

 エリアマネージャーは「残業時間が月に50時間を超えると、労基に目をつけられる。そうなったら会社が潰れる」といっていました。業務量はそのままに、時間だけをあくまで「労基署対策」として調整していたんです。

「ありえない」とお思いかもしれませんが、どこか納得している自分もいました。「修正」宣言はショックではありましたが、私自身もタイムカードを少なく見積もって提出していましたし、いまから思えば「会社に洗脳されていた」のだと思います。もしかすると、上司が私にしたように、当時の私も同僚を「洗脳」していたかもしれません。その意味ではまさに、“異常な環境”でした。

相談しても「何の返事もなかった」

©文藝春秋

――業務量の多さを会社や労働組合に相談したことはなかったのでしょうか。

Aさん 休日も深夜も電話がかかって来る状況があまりに連日続いたので、「せめて土日は電話を切れないか」と上司に相談しました。

 しかし、「お客様第一主義だから」と取り合ってももらえず、さらには「業務量が多いのはあなたの配達員教育がなっていないから」と逆に批判されることさえありました。

 社内には「ワタミヘルプライン」という相談窓口はありましたが、社内では「彼らは社員ではなく経営の味方だ、形だけの存在だ」といわれていました。

 なので、直接、支社長や事業部長といった上司にも手紙を書いて、このままだと限界です、なんとかこの状況を変えて欲しいと訴えました。