連載決定から1年間は保留に
――漫画の連載が決まったきっかけは?
津島 半年間ほどグループセラピーに通って、「漫画に描きたい」と決意。そこからいろんな出版社に作品を持ち込みました。どこの編集部からも高評価をいただいて、その場で「連載しよう!」と声をかけてくださった方もいました。
でも、扱う内容がナイーブなので連載のハードルが高く、最終的に採用してくれたのが集英社の「週プレNEWS」です。今年から「グランドジャンプ」に移ったのですが、これは単行本の出版を意識してのこと。単行本になれば、刑務所にいる人が読めるだろうし、悩んでいる人に手渡すこともできるので。
「週プレNEWS」で連載が決まった後も、連載開始には1年間ほどかかりました。
――その期間は取材をされていたんですか?
津島 いえ、取材ではなく、コンプライアンスの問題で時間がかかったんです。というのも、セックス依存症というナイーブな問題を取り上げる作品で誰かを傷つけることがあってはいけないからです。
漫画では父親からの虐待経験を描いていますが、それもリスクが高いことなので……。
――リスクが高いというのは?
津島 私の父親は存命で、虐待について漫画で発表すると問題が起こる可能性があります。私としても、父親に不幸になってほしいわけでも、迷惑をかけたいわけでもないので……。
(沈黙)
津島 あの、いつも父親のことを話そうとすると言葉に詰まってしまうんです。すみません。
その、難しい問題なので、たぶん私自身も心に課題が残っているところがあって……。自分でも虐待を描いて良かったのか不安に思ったり、虐待が存在しなかったことにすれば良かったんじゃないかと悩んだりするんです。
――でも、その場面が描かれていることで、読者からは「読んで救われた」という声も多いそうですね。
津島 そうですね。私だけではなく、セックス依存症患者は性的虐待やいじめられた経験がある人が多いので、必要なエピソードだったんです。