連載が決まった喜びを、東京湾に向かって叫ぶ
――漫画連載が決まった時の気持ちは、いかがでしたか?
津島 漫画家になるのは子どもの頃からの夢だったので、嬉しくて東京湾に向かって「うおおおお」と叫びました。
連載が決まる前、セックス依存症に気づくきっかけとなった彼女(#1参照)から「漫画家の才能がない」と言われたことがあったんです。だから、「ざまあみろ、見返してやったぞ!」という感情もありました。
――嬉しかった様子が伝わります。作品を描く上で、気をつけていることは?
津島 漫画としての面白さを大事にしています。教科書的な漫画だと真面目な読者しか手に取ってくれません。読んでほしいのは、昔の私のように性に耽溺(たんでき)している人です。「ちょっとエッチな絵が載っているから読もうかな」と、軽い気持ちで手に取ってほしい。それが、セックス依存症の予防につながると思うんです。
――漫画ではグループセラピーに通う人々が描かれていますが、どのようにキャラクターを作りこんでいるのですか?
津島 グループセラピーで出会った人たちをそのまま描くわけにはいきませんから、セックス依存症の書籍なども参考にしながら、組み立てていきました。
この漫画には監修者として、精神保健福祉士・社会福祉士の斉藤章佳先生がついています。斉藤先生にネームの段階でチェックしていただき、専門的に気になる箇所を指摘いただいています。
――連載にあたって、人間関係に変化はありました?
津島 ないですね。依存症になると人間関係が壊れていくので、そもそも友達が一人もいなかったんです。友達と遊んでいる暇があったら、女性に依存しているほうがいいし、男友達には女性を取られてしまう危険性がありますから。そうやって孤独になっていったので、漫画を連載したからと言って人間関係に変化はありませんでした。
ただ、依存症の回復に伴い、改善はしていると思います。漫画家の後輩がたまにカラオケに誘ってくれるので助かっています。
――作品を描くことで変わったことは?
津島 スリップ(再発)はありました。やめていた自慰行為が再発したんです。
セックス依存症にとっての自慰行為は、アルコール依存症にとっての最初の一杯と同じ。「少しだけ」のつもりが、歯止めが利かなくなってしまいます。
私自身、自慰行為の後に、昔関係のあった女性にメールを送っていました。「この女性なら事情を理解してくれる。体の関係を持てる」と期待していたんです。翌日に冷静になって、「なんでこんなメールを送ったんだろう」と気が付きました。油断は禁物です。