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「優しい時代」への変化が新しい価値観を生んだ

 また、Z世代は「働き方改革」や「ワークライフバランス」というキーワードの普及とともに育ったわけですが、こうした「チル」という価値観と相性の良い「優しい時代」になっていったことも、彼らがこうした世代特徴を形成する一因になったかもしれません。

 以前、大手レコード会社のエイベックス代表取締役社長(当時)の松浦勝人氏が、三田労働基準監督署から「実労働時間を管理していない」「長時間残業をさせている」「残業代を適正に払っていない」と指摘され、改善勧告を受けた時に、「好きで仕事をやっている人に対しての労働時間だけの抑制は絶対に望まない。好きで仕事をやっている人は仕事と遊びの境目なんてない。僕らの業界はそういう人の『夢中』から世の中を感動させるものが生まれる。それを否定して欲しくない」といった内容をブログに書き、炎上したことがありました。

 戦後の根性論が残っている最後の世代である私からすると、松浦氏の意見に共感してしまう面もありますが、優しい時代を生き、「チル」という価値観を重視するZ世代の多くに、この考えは通じなくなっているように思います。

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 どんなに楽しい仕事であっても、チルっているマイペースな彼らはプライベートの方が大切で、プライベートを超えるほど魅力のある仕事はそもそも存在しない……これがZ世代の多くの考え方であるように思います。

「チル」を象徴する「シーシャ」ブーム

 彼らの「チル」という感覚を最も象徴しているトレンドアイテムが「シーシャ」です。「シーシャ」とは水タバコのことで、中東発祥と言われています。

©iStock.com

 日本では、バブル期以降に様々な国の料理店が開店し、その中の中近東料理を提供するレストランでシーシャが吸えるところが増えました。

 それからだいぶ時が流れ、世界のZ世代の間でのシーシャブームもあり、この数年、中近東料理店以外でも、シーシャが吸えるカフェやバーが日本の大都市部を中心に増えています。

 先日、Z世代たちにインタビューするために秋田に出張した際に、一軒だけシーシャが吸えるバーがあり、そこへ行くと可愛らしいZ世代のOLさんたちがシーシャを楽しんでいました。

 この日本のシーシャブームの中心にいるのが、Z世代の若者たちです。シーシャは、彼らの「チル」という価値観を最も象徴的に、そしてオシャレに具現化したものであり、彼らの世代的アイコンになりつつある、と言ってもいいでしょう。