DHCからB子さんに届いた分厚い封筒のなかみ
そうして2020年9月半ば頃から、“サクラ投稿”のプロジェクトが始まった。Bさんの自宅にはDHCから分厚い封筒が届けられたという。
「応募した後、自宅に大量の“らくがき板”のコピーが郵送されてきました。この中から、自分の年齢や性別と近しいお客さまの口コミを選別して自分のSNSに投稿せよ、とのことでした。
ルールは、口コミの文言を一字一句変えることなく投稿すること。あくまでユーザーの方の口コミであり『口コミを捏造したわけではない』と主張したいのだと思います。でも、なりすましであることに変わりはありませんよね……。投稿には罪悪感がありました」
Bさんが“サクラ投稿”をしている間にも、DHCからは細かい指示があり、そのたびに少しずつルールが変わっていったという。
「当初はアットコスメなど大手美容口コミサイトに投稿する社員が多かったのですが、『運営に目をつけられるかもしれないから』と投稿制限がかかりました。それ以降はInstagramやFacebookに投稿している人が多いようです。
ついには要報告のノルマ化
最初はノルマもなく、空いた時間に1、2件投稿するだけでよかったのですが、最終的には家族にも投稿してもらうことや、1日2件以上投稿することが“有償投稿”の条件になりました」(同前)
口コミを投稿した後には会社への報告も義務付けられたという。
「どんな内容の口コミをどのSNSに投稿したのかを管理する専用サイトが作られ、自分の成果はそこに記録していました。実際に投稿した口コミのスクリーンショットをメールで秘書の方に送るようにも指示されていました」(同前)
そのうち“サクラ投稿”に関わる社員だけのメーリングリストが作成され、吉田氏の秘書から「会長からのお言葉を連絡します」と、吉田氏の熱い感想が届くようになったという。
《諸君の熱心な投稿活動によって、本プロジェクトはすこぶる順調に推移している。必ずや成果につながるものと確信している。(中略)DHCの宣伝広告部隊の社員は商品知識が乏しく、他社に比べて驚くほど全てが稚拙である。(中略)もうDHC広告宣伝担当者には頼るな。お客様に頼っていこう(原文ママ)》(吉田氏の言葉が記載されたメール2020年10月12日)
社員の複雑な心中とは裏腹に、吉田氏は投稿を引き受けた社員、特に報酬を辞退した社員がいることに感激したようで、彼らに対し“称号”を与え、称賛した。