お母さんに「守ってほしかった……」
8歳から継父と一緒に暮らした彩さん(20代後半、女性)は、継父が思春期の自分と妹に厳しいしつけをしたと語っています。自分が間違ったことをすると厳しく叱る怖い継父を「父親」として受け入れてはいたものの、母親にはその厳しさから自分を「守ってほしかった」という思いを持っていました。しかし、継父の理不尽さを母親に訴えても継父を擁護するばかりで、自分を守ってくれなかったと感じています。
いや、でも直接的に(継父に対しては)言えないんですよ、怖くて。けど、母には言えるから、母に言ってもでも父(継父)の味方で、「何でわかってくれんのん?」って言って。(中略)「ここまですることないじゃん」っていうようなことを(母親に)言っても、「でもお父さん間違ってないでしょう」って。いや、まあそうなんだけどっていう(笑)。(中略)父親(継父)は机の上に(中略)何かが置いてあるとだめな人なんですよ。けど、結構教科書とかいろいろ置いてて、それを全部バーッて落としたりして、そしたらすごい手間かかるじゃないですか、片付けるのに。ここまですることないじゃんっていう、すごいどうでもいい話なんですけど、子どもの中ではもう何かショッキングというか。
不登校、そして精神疾患を発症
彩さんは、自分が継父に直面しなくてすむよう母親に継父との間に入ってほしかったのに、その思いが伝わらず母親と「バトル」になったと言います。そして、「母親って私の中では(継親との)パイプ役だと思ってるから、その役割をしてくれなかったというのはちょっと悲しかったですね」と語ります。
その後、高校時代に恋愛関係など人間関係のトラブルを経験し、不登校になります。転校した定時制の高校を卒業後に精神疾患を発症していると診断され、現在も治療を受けています。今では少しずつ改善していると感じてはいるものの、母親との関係がうまく行かないことを悩み続けており、現在の病気の根本には母親との関係が関わっていると考えています。このケースは、虐待的行為のあった別居親(実父)とは絶縁、同居親(実母)の再婚で8歳から同居した継父からも虐待的行為を受け、実母にも頼れず、また周りに頼れる親族もいない。
結果として、幼いときから身近で信頼できる相手が誰もいない、誰とも愛着関係を形成できなかったことが、現在の病気(精神の不安定さ)につながっているように思えます。