既製老眼鏡の便利な活用方法は?
――老眼鏡は眼鏡店で作ったほうが快適に使えることがわかりました。では、既製老眼鏡はどういった場面で使うのが正解なのでしょうか。
内田 1本はきちんと作っていただいたうえで、サブとして使うのには便利だと思います。たとえばメニューを見るなど短時間の使用であれば、既製老眼鏡でも問題ありません。また、安価で気軽に買い足せますから、自宅のトイレやキッチンなど使用する場所にそれぞれ配置しておけば、いちいち持ち運ばなくて済みますよね。外出の際に手持ちの老眼鏡を忘れた際の応急措置としても便利でしょう。その際も、自分に必要な度数を知っておけば、それを目安に購入することができます。
――基本的には短時間の使用にとどめたほうが良いと。
内田 はい。また、既製老眼鏡というと安価なものを思い浮かべがちですが、眼鏡産地である福井県鯖江市で生産されたものなど、作りにこだわった商品もあります。こうしたものは調整もできますし、外出先でちょっと使うときでも見た目にこだわりたいという方にはおすすめです。
メガネ型ルーペと老眼鏡の違いとは?
――ここ数年、メガネ型ルーペが人気を集めていますよね。老眼鏡代わりに使っている人も見掛けます。
内田 そうですね。ですが、ルーペと老眼鏡は、そもそも用途が異なります。老眼鏡は見たい距離にピントを合わせるもの。ルーペは、モノを拡大して見るものなので、たとえば針に糸を通すときなど対象物を大きくして見たいときに使うものです。
――ということは、ルーペを老眼鏡代わりにしている人は、ピントが合っていない状態のまま、拡大することで何とか見ているということですね。
内田 簡単に言うとそういうことです。必要以上にモノを大きくして見ると目は疲れますから、まずは老眼鏡でピントを合わせてから、それでも見えにくければその上からルーペを使っていただくのが良いでしょう。たとえば食品パッケージの裏などに記載された小さな文字も、ピントが合っていれば老眼鏡だけでも見ることができるはずです。
――なるほど。スマホを離して見る姿は年齢を感じさせますし、見えづらさを感じたら自己判断で既製老眼鏡やルーペを使うのではなく、一度眼科や眼鏡店へ行ったほうが良いですね。
内田 はい。人は情報の約9割を目から得ていると言われています。なかでも現在はスマホやタブレット、パソコンがメインでしょう。度数が変わるまでの平均的なサイクルは3~4年と言われていますし、日々スマホやパソコンに費やしている時間で費用対効果を考えれば、しっかりご自分用にあつらえたものを使う価値は十分あると思います。
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長時間の使用には適さないという100円ショップの老眼鏡だが、やはりその手軽さは特筆すべきポイントだろう。目的や場所を限定したサブ用、外出先での応急措置としては便利だという。また、老眼鏡とメガネ型ルーペとの違いも解説してもらうとよくわかった。それぞれを時と場合によって適宜使い分けたい。
写真=今井知佑/文藝春秋
取材協力=「金鳳堂」京橋本店