「多少痛いところがあるのは普通のこと」
振り返ってみると、何かと効率化がもてはやされるいまのスポーツ界にあって、杉浦がたどり着いた結論はそれとまったく逆行するものだ。中でも特にそんなイメージが強い慶大だからこそ、それは少し意外なことでもあった。
そんな話をすると、杉浦自身も苦笑する。
「下級生の時はちょっと痛いところがあったり、少しキツイ部分があるとすぐに練習を止めてしまっていたんですよね。体のことを考えて、それが正しいと思っていた。でも、多少痛いところがあるなんて普通のことで、その上でどうやってトレーニングしていくのかを考えないといけない。そうやって強くなることも現実的にはあるんです。結局、泥臭くやっていくことが一番の近道だったんだなと思います」
そして、そんな考え方は同時に現在の慶大チームの弱点でもあると杉浦は言う。
「慶大にはいわゆるスポーツ推薦はありませんし、確かに学業との両立は大変です。自分も徹夜でレポートをやらなきゃいけないようなこともないとはいえない。ただ、そのせいかチーム全体でつい『文武両道でやらなきゃいけないんだから、効率的にやろう』みたいな方向に行こうとしてしまう。
でも、それは言い訳だと思うんです。箱根に出るためには、練習量も練習にかける時間も、チームのスタンダードを箱根に出ているチームのスタンダードに合わせられないことにははじまらないのかなと」
強豪との間の明確な違いとは…?
その思いは実際に今大会で学生連合チームに合流して、より強くなったという。
「やっぱり箱根に何度も出ている大学の選手はセンスがすごいんですよ。例えばクロスカントリーのコースを走るとき、僕なんかはウォームアップで何周もコースを走って『この辺でペースを上げて、アップダウンで仕掛けて…』とかいろいろ考えるわけです。
でも、強豪校の選手ってそれが感覚でちょっと走っただけでわかってしまう。そこの差を埋めるには、頭を使ってトレーニングをするのは大前提で、そのうえで練習の量もその基準まで引き上げないといけない」