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「主体性」という言葉が持つ意味とは?

 もうひとつ、杉浦が強調したのが、「主体性」という言葉の持つ意味をはき違えないことだ。

「自分の頭で考えて、主体的にトレーニングを…というのは最近よく言いますよね。でも、それが行き過ぎるとコーチや監督が出してくれるメニューについても『なんか違うなぁ』みたいになってしまいがちな気がします。特にウチみたいなチームはそういう考え方に傾倒しがちというか。変に考えることを重要視しすぎてしまう。

 主体性をもって取り組むということは、周りのアドバイスを拒絶するということと意外と紙一重なのかなと思います。指導者は自分のためを思って言ってくれているわけであって、まずはそれを素直に聞き入れてシンプルに向き合ってみる。変に疑ってかかってしまって、『自分にこの練習は合わない!』みたいにこんがらがってしまう選手も意外と多いような気がしています」

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 主体性という言葉は聞こえこそ良いが、裏を返せば自身の裁量次第でいくらでも自分に甘くできてしまうという危険性を孕んでいる。一部の天才や、日本トップクラスの選手を除けば、それは決してメリットばかりではないと杉浦は考えている。

来年の箱根路は「周囲を驚かせたい!」

「逆に言えば、もともと選手自身が主体的に考えることはできているチームなのだから、各選手が目線をしっかり箱根駅伝のスタンダードに合わせてトレーニングができれば、来季、周りを驚かせる自信はありますね」

 昨年の予選会での慶大の成績は19位。

 10位までの本戦出場校に入るにはまだ差があるように見えるが、杉浦には確たる自信があるようだ。

「今年、学生連合チームで箱根を走らせてもらえたので、次はもうチームで出ることを目指すだけです。あとはいかに結果に貪欲になれるか。自分も最初はカルチャーショックを受けたんですけど、強い選手って結果へのこだわり方が全く違うんです。『過程が大事』とか『やるだけやったんだから』とか思いがちだったんですけど、それは結果を出して初めていえること。いつだって結果ありきで、順位やタイムにこだわって勝負していきたいです」

「スマートなお坊ちゃん」なんて、とんでもなかった。

 その顔は、虎視眈々とアップセットを狙う「勝負師」の目をしていた。

写真=末永裕樹/文藝春秋

 

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