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お金を用意する方法に「盗む、騙し取る、銀行強盗をする」という選択肢が

 この“後先のことを考える”力は計画力であり、専門用語で“実行機能”と呼ばれています。ここが弱いと、何でも思いつきで行動しているかのような状態になります。彼らは「ゲーム機のソフトを買う金がなかったから人を刺してお金を奪った」「女の子に興味があったけど同級生は怖いから幼女を触った」といった、思いつきに近い非行をやっているのです。

 たとえば、彼らに次のような質問を投げかけたとします。

「あなたは今、十分なお金をもっていません。1週間後までに10万円用意しなければいけません。どんな方法でもいいので考えてみてください」

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「どんな方法でもいいから」と言われると、親族から借りる、消費者金融から借りる、盗む、騙し取る、銀行強盗をする、といったものが出てきます。「(親族などに)借りたりする」という選択肢と、「盗む」という選択肢が普通に並んで出てくるのです。「盗む」などという選択をすると後が大変になるし、そもそもうまくいくとも限らない、と判断するのが普通の感覚でしょうが、そう考えられるのは先のことを見通す計画力があるからです。

 しかし先のことを考えて計画を立てる力、つまり実行機能が弱いと、より安易な方法である盗む、騙し取るといった方法を選択したりするのです。

 世の中には「どうしてそんな馬鹿なことをしたのか」と思わざるを得ないような事件が多いですが、そこにも、“後先を考える力の弱さ”が出ているのです。非行少年たちの中にも、見通しをもって計画を立てる力が弱く、安易な非行を行ってしまう少年が多くみられました。 

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少年院は「まあまあ」「楽しい」

“おわりに”にも記したのですが、故・岡本茂樹先生の著書『反省させると犯罪者になります』(新潮新書)を読んだとき、私が真っ先に感じたのは、「反省できるだけでも上等ではないか」ということでした。

 私が出会ってきた非行少年たちの中には、反省すらできない少年たちが大勢いました。幼女への強制猥褻をした少年に、「どうしてそんなことをやったのか?」と聞いても、たいてい「うーん」と唸るだけです。そして、考えた挙句に返ってくる答えは「触りたかったから」程度です。「被害者に対してどう思っているの?」と尋ねると「悪い」と即答します。でもこれは反省の言葉ではありません。 

 私は罪を犯した少年に、最初から本当の反省の言葉は期待していません。最初は嘘で誤魔化そうとしてもいいのです。時間をかけて修正していけばいいのです。せめて「やばいことをしてしまった」といった後悔がみられるだけでいいのです。そこから少しずつ更生させることができるのです。 

 しかし、実際の少年たちには、全くそんな気配もありません。少年院に来てみてどう感じているかと尋ねてみても、ニコニコして「まあまあ」「楽しい」と答え、そもそも自分が置かれている立場が理解できていないのです。