【大繁盛の理由その6】店同士が助け合うことで、横丁全体がいい雰囲気に
ご近所づきあいが好きな人たちに店を任せたことも計り知れない効果を生んでいる。例えば、自分の店が満席の場合はほかの店を紹介したり、混雑状況によっては別の店の出前をとることができるなど、互いに融通を利かせながら、協力し合いながら、みんなで売上を伸ばしているのだ。
「こういうつきあいが好きな人たちじゃないと、今のような横丁の雰囲気は出ないと思いますね」
第1期として2008年5月に13店舗でスタートし、2011年6月には第2期として6店舗が新たにオープン。2011年11月の第3期で現在の20店舗になった。順調にも見えるが、最初は真っ暗で“人いませんよ、ここ!”とか“本当に大丈夫ですか?”と心配されることばかりだった。
「それでも手応えを感じていたのは、開発前の闇に包まれていたこの場所を見た時に、多くのお客さんが集い、ワイワイとお酒を楽しむ光景がはっきりと映像として頭に浮かんでいたからです。よくなにを言ってるのかわからないって言われるんですけど」
なかなか理解できない話かもしれないが、実際、恵比寿横丁は浜倉さんが思い描いた通りになった。そして、今や恵比寿横丁に店を出したくても出せない人たちが周辺に店を次々とオープンさせ、地域全体に活気をもたらしている。
「恵比寿横丁と周囲の店をハシゴする人も増えて、いい流れが生まれていますね」
最初は“恵比寿を汚した男”と揶揄されたと笑う浜倉さんだが、今ではすっかり汚名返上である。
【大繁盛の理由その7】作ったのは飲食店街ではなく、本音で話せるコミュニティ
そして、男女が出会いを求めてやってくるナンパスポットとしても知られるように。そう呼ばれることについて、浜倉さんはどう思っているのだろうか?
「僕はお酒を飲みながら本音で話せるコミュニティを作ったつもりなので、その究極の場所としてナンパスポットだと呼ばれているんだろうと思います。中にはお行儀が悪いお客さんもいらっしゃるので、昔の常連さんからしたら居心地が悪くなったという方もいらっしゃいますが、それでもみんなが恵比寿横丁に集まってくれるのは嬉しいですよね。ちょっと行き過ぎ感はあるとはいえ、今の時代、みなさん、そのくらい他人とのコミュニケーションを求めているんじゃないかと思います」
さらに浜倉さんはこう続けた。
「実際、この恵比寿横丁の成功が発端となって続々と新しい横丁が誕生し、若い世代が昔からあった横丁にも行けるようになりました。今や、世代を超えて、昔ながらの良き日本の酒場文化を次世代に繋ぐ役割を果たし、“横丁”がマーケットのスタンダードになったと感じています」
現在は2020年のオープンに向けて新たなプロジェクトが進行中だという浜倉さん。これからの東京の景気を盛り上げてくれる立役者のひとりであることは間違いない。
写真=榎本麻美/文藝春秋
恵比寿横丁
東京都渋谷区恵比寿1-7-4 無休
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