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都営新宿線“ナゾの終着駅”「本八幡」には何がある?

2021/03/22
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 そう思って京成八幡駅の周囲を少し歩いているとすぐに見つかった。葛飾八幡宮という立派な神社である。参道の途中を京成線が横切っているようで、古くからの本八幡の町は千葉街道の宿場町として、そしてこの葛飾八幡宮の門前町として賑わっていたのだろう。市長室にガラス張りのシャワー室が作られたとかで話題の市川市役所も本八幡の近くにあって、市川市の中心としての役割も持っている。

 
 

古い町に生まれた「京成八幡駅」

 そんな古い町にはじめてできた駅は京成線の京成八幡駅。1915年に新八幡駅という名で開業した。“新”がついているのは、より葛飾八幡宮の近くに八幡駅があったから。そして1935年に総武線にも駅ができた。

 そのとき、そのまま八幡駅と名乗る手もあったのだろうが、九州にすでに八幡駅(八幡製鉄所の八幡だ)があったし、京成線の駅とも紛らわしいので“本”をつけて本八幡と名乗ったという。都営新宿線がやってきたのはだいぶ遅れて1989年のことだ。

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 つまり、本八幡駅とその周辺は近世以来の街道筋、葛飾八幡宮のお膝元として発展し、そこに大正時代以降にいくつもの駅が生まれて千葉県西部の交通の要衝として一層の成長を遂げた、というわけだ。

 

 チェーン店が中心の駅前にかつて永井荷風が暮らしたというのどかな商店街、裏道に入ればスナック街、そして超現代的なタワーマンションと、あらゆる“日本”が詰まっているのは、そうした本八幡の歴史のおかげなのである。

 
 

再び都営新宿線に

 そんなわけで、どうやって東京に戻ろうかと考えたが、結局再び都営新宿線に戻った。地下への階段を降りるとやっぱりいつもの無機質な通路が待っていた。

 

 何が無機質だって、今どき地下鉄も私鉄もJRもたいていは構内にいくつもの商業施設が入っているもの。それが都営新宿線の場合はまったくといっていいほどなにもないのだ。もしかすると、いつかはこの味気ない通路もにぎやかな飲食店やショップで覆われてしまうのかもしれない。それはそれで、なんだかつまらない気がするのである。

写真=鼠入昌史

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