一業種一社の原則を捨てた東京五輪
前述したように、元々五輪スポンサー企業は一業種一社が鉄則であった。
だが主催者にとっては、そうすることによって、スポンサーとなる企業の数が自ずと制限されてしまうというマイナス面があった。リオやロンドン大会でのスポンサー数が20社以内であったのは、五輪で名を売り、その協賛金の負担に耐えられる業界や業種がその程度であることを示している。
ロンドンとリオ五輪のスポンサー企業名と業種を見てみよう。
一見して分かるのは、精密機器、金融、自動車など、一致する業種が多いことだ。そしてそれは東京でも同じである。
ここで東京のスポンサーを業種別に分けてみよう。
まず初めは国内最上級のゴールドパートナー15社。組織委のHPで企業ロゴを押すと、契約カテゴリーが記載されている。
次に、ゴールドの下に位置するオフィシャルパートナーの企業群を見てみよう。
こちらは組織委のHPでロゴを押してもそれぞれの社のHPに飛ぶだけで契約カテゴリーが明記されておらず、分かりにくい。ささいなことだが、協賛金の多寡でHPではきっちり区別されている。
さらに、3番目のカテゴリーとなるオフィシャルサポーターは下の図のとおりである。こちらは組織委のHPでは、社名だけでロゴの掲載もない。
これらのスポンサーが得られる権利は、
・ 呼称やマーク類の使用権(大会エンブレム、マスコット、JOCエンブレム、JOCスローガン「がんばれ!ニッポン!」等)
・大会会場におけるプロモーション権
・大会関連グッズ等の利用権
・商品・サービスのサプライ権
などである。すでにテレビCMや町中には、大会エンブレムを冠した広告が溢あふれているから、誰でもその例を見ているだろう。
一見してわかる通り、東京大会の協賛企業の業種は多岐にわたっている。そして、
・金融
・生保
・精密機器
・食品
・旅行代理店
・セキュリティ
・航空
・印刷
・郵便宅配
・新聞社
など実に10種の業界の企業が複数参加している。こうなるともはや完全にカニバリズム(共食い)現象を起こしていてマーケティング的価値は低下しているが、それでも参加企業が増え続けるのは、ライバル社だけに五輪スポンサーを名乗られたくない、という競争心が巧みに利用されているからではないか。
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