“川崎国”なるキーワードが生まれ報道は過熱
そして、2月27日。当初から主犯格として捜査線上に浮かんでいた18歳の少年Aが川崎署に出頭。同日、やはり、共犯と目されていた17歳の少年BとCが殺人容疑で逮捕された。彼らは日頃から少年Xを子分のように扱い、犯行当日は態度が悪いと言いがかりをつけて暴行。さらに、最低気温4度の寒夜に裸で川を泳がせた末、致命的な傷を負わせたまま放置。犯行現場から700メートルほど離れた児童公園のトイレで被害者の衣服を燃やし、証拠隠滅を図ったとされる。
事件は近年稀に見る凶悪さに加えて、容疑者のグループと少年Xが、当時はまだ目新しかったソーシャル・ネットワーキング・サービス、LINEでやり取りしていたことから、現代的な事件だと捉えられ、報道が過熱。また、少年Xの膝には擦り傷があって、加害者は彼を跪かせた上で首にナイフを当てたと見られたが、それはやはり当時話題だったイスラム国の処刑映像を模したのではないか、という憶測が“川崎国”なるキーワードを生み出し、下世話な興味を煽っていった。現場の河川敷にも、少年Xの死を悼む人々はもちろん、メディアや野次馬が押し寄せる。献花が山になる一方で、火災も発生した。
質問サイトの答えに従い、事件現場へ
事件の現場は、検索エンジンに「川崎 殺人 場所」と打ち込めば簡単に知ることができる。話題は当然のようにインターネット上でも駆けめぐり、結果、今でも様々な情報が転がっているのだ。
「川崎中1殺害事件の詳しい場所を教えてください。冥福を祈りに行きたいのです」
質問サイトに寄せられたそんな問いに対する答えに従って、京急川崎駅から多摩川沿いに臨海部へと向かう短い路線、京急大師線に乗り、隣駅の港町で下車する。真新しいホームに降り立つと聞こえてきたのは、1957年、日本コロムビアから発売された美空ひばりの代表曲のひとつで、港町が歌詞のモデルになったという「港町十三番地」のメロディだ。壁には大きくこう記されている。
「音楽のまち・かわさき レコード発祥の地 アナログからデジタルへ」