ロマンスカー7形式10両がズラリ
ヒストリーシアターから隣の部屋に入れば、ロマンスカー3形式の先頭車がこちらを向いている。おおっ、と思わず声を上げたくなる。左から3000形、3100形、7000形だ。その奥に10000形と20000形がある。これら先頭車7両を含む10両が展示されている。7000形以外は客室も見学できる。これぞロマンスカーミュージアムだ。
1957年に誕生した3000形は、「Super Express」の愛称があり、SE車とも呼ばれた。当時としては画期的な流線型で、狭軌鉄道の世界最高速度、時速145kmを樹立した。
この速度を達成した場所は小田急電鉄ではなく、国鉄の東海道本線だった。なぜなら、3000形は小田急と国鉄の共同開発で作られたからだ。小田急は、新宿と小田原を60分で結ぶ高速列車を作ろうとしていた。国鉄は航空技術を応用した高速車両、将来の新幹線電車を研究していた。
両社の共同研究の結果、従来の常識だった「大出力モーターと重く頑丈な車体」とは異なり、軽量車体で高速化を目指した。連接車体といって、車両間の連結部に台車を置き、乗り心地と曲線通過速度の課題も解決した。連接車体は小田急の後継特急車両に引き継がれた。また、得られた技術は新幹線「0系」電車に採用されているという。
1963年に誕生した3100形は、3000形の特急が大人気となり、特急車両を増備するために作られた。新しいSE車として「New Super Express」、NSE車と呼ばれた。小田急としては初めて展望座席を設置し、運転席を2階に上げた。私にとって3100形以降の展望車付き特急電車こそ「ロマンスカー」だ。
同じく展望車を持つ名鉄7000系パノラマカー、2階建て車両の近鉄10100系ビスタカーが鉄道好きな子どもたちの憧れだった。3000形と3100形は運用中に先頭車の仕様が変更されており、両方とも展示されているので違いを探してみよう。
7000形は「Luxury Super Express」、LSE車と呼ばれた。先頭車にライトやヘッドマークの凸部がなく、もっとも鋭角な流線型で大人気となった。先頭車だけでもカッコいいけれど、連接車体でひとつの生き物のように見せる編成全体の姿が美しい。リクライニングシートの採用で乗り心地も良くなった。
10000形は展望席以外の座席を高くし、ハイデッカー構造となった。展望席だけではなく、中間車のサービスもアップした画期的な車両だ。愛称は「HiSE」で、HiはHighの略。ただしHighはハイデッカーだけではなく、ハイレベル、ハイクラス、ハイパフォーマンスのイメージだという。展示車は先頭車のみだけど、連結部の特徴、連接台車の様子を見せてくれる。
20000形はJR東海の御殿場線へ直通運転するロマンスカーとして作られた。JR東海の371系電車と共通設計となり展望室を持たない。そのかわり運転席を下げ、座席をハイデッカーとして眺望に配慮した。特徴は中間車の一部に2階建て車両を採用した。2階建ての上階は3列の大型座席、下階はグループ客向けのコンパートメント席だ。JR区間ではグリーン車、小田急区間は特別席として販売された。