中国製ワクチンの実力は?
【Q9】中国もワクチン外交に積極的です。その実力をどう見ていますか。
【A9】中国製のワクチンについては、十分なデータが公開されていないので何とも言えない状況です。不活化ワクチンとアデノウイルスの遺伝子組み換えワクチンを作っているようですが、彼らにもmRNAワクチンを作る技術力はあるはずです。
一つ言えることは、データに透明性のないワクチンには中々手を出しづらい、ということ。同じ使うなら、それぞれの開発企業がデータを公開し合い、競争して品質を高めていく中で開発されたワクチンを――、というのが本音なのではないでしょうか。
なぜ接種率が高いのに感染者数が下がらない国がある?
【Q10】インドではアストラゼネカ社のワクチンを接種しているのに効果が出ていないようです。他にもワクチン接種率が高いのに感染者数が思うように下がっていない国もあるようですが、どんな理由が考えられますか。
【A10】インドでは自国で生産したアストラゼネカ社のワクチンと、国産ワクチン「コバクシン」を接種しているようですが、9割はアストラゼネカのワクチンを接種しているとの報道がありました。インドでは既に1億人以上がワクチンを接種していますが、人口当たりの接種率は決して高くなく、1日当たり感染者が30万人を超えるという厳しい状況にあるようです。このようなインドの状況をもって、ワクチンを接種しても感染を制御できないと判断するのは無理があると思います。
ワクチンは、感染を防ぐ、感染しても病気の発症を防ぐ、あるいは発症しても重症化を防ぐ、の3つのステップで効果を発揮します。したがって、ワクチンを接種してもウイルスに感染し、ウイルスを体内で増やしながら発症していない人も沢山いるわけですから、三密を避けるなど、行動変容が重要です。
「甘い考えのツケが回ってきた状況」
【Q11】今回の“コロナ禍”で日本人が学んだことは何でしょうか。
【A11】すでに触れた通り、ワクチンの研究基盤の脆弱性により、新型コロナウイルスのワクチン開発が遅々として進まなかったことは事実です。だからといって、急に巨額のお金を出しさえすればワクチンが簡単に作れるというものでもありません。時間をかけた基礎研究で積み重ねたデータと技術、そしてインフラが、いざという時に威力を発揮するのです。
日本はこれまで「“いざという時”は来ないもの」、と甘く考えてきました。いまはまさに、そのツケが回ってきた状況。国策として広い分野の基礎研究者を手厚く育成し、有事に備えた研究施設を整備し、つねにメンテナンスをしておく……。そうした「備え」の重要性を、身をもって体験しているのです。この反省を元に、今回は外国製のワクチンに助けてもらうとしても、次のパンデミックに向けた強固な備えを整備するために、いまこそ意識を変えて取りかかるべきでしょう。