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昔話のふとした疑問を膨らませて得た発想を、裁判の争点に利用

――毎回、お話はどのようにして作っているのですか?

平井 昔話を何度も読み返して、そこで浮かんでくる疑問みたいなものを、話を作る取っ掛かりにしてきました。例えば「三匹のこぶた」だと、「なんでこぶたは狼の体がすっぽり入るほどの大きな鍋を持っていたのかな?」という疑問が、「もしかしたら、計画的な殺人だったのかもしれない」という妄想につながりました。

――「浦島太郎」では「乙姫のお腹には浦島太郎との子どもがいた」という設定を付け足すことで、議論がかなり広がっていました。

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「浦島太郎」

平井 「浦島太郎」の場合は、若い男女が2人きりで3年間一緒にいたわけですから、深い関係にあったんじゃないか? と考えました。だとすると、乙姫が危険な玉手箱を渡したのは、「痴情のもつれ」からだった? 乙姫が浦島太郎を許せなかったのは、なぜ?そんな妄想を重ねて、設定ができあがりました。

「赤ずきん」も、狼のお腹に大量の石を詰めて紐で縫い合わせるって、考えてみるとサイコパスで猟奇的ですよね(笑)。それを、法律監修をしてくれている弁護士さんに相談したところ、「心神喪失」「刑法第39条」というキーワードが浮上してきたんです。

「赤ずきん」

子どもたちの判決が五分五分に分かれるように制作

――物語にそうした独自の解釈を加えることで、見どころが生まれるわけですね。番組を作る上で大変なのはどんなところでしょうか?

平井 一番大変なのは、番組を観た子どもたちが判決を考えるときに、なるべく五分五分に分かれるように作っていくことです。悩みながら真剣に考えてほしいので、印象があっさりどちらか一方に偏ってしまわないよう調整しなければならない。それが毎回、本当に骨の折れる作業でした。

 実は、制作する僕らも、「この裁判の判決は有罪です」というふうに答えを決めて作っているわけではないんです。子どもたちの心証がどっちに傾いているかということを、完成する最後の瞬間まで考えながら作っていました。

◇◇◇

 後編では、『昔話法廷』に出演した豪華俳優や脚本家の起用について語っていただいた。

※『昔話法廷』は、NHK for Schoolで全話公開中です。

(文=二階堂銀河/A4studio)