テレビの反響を機に、騒動の顛末を語り始めた選手たち
全国放送された、この番組の反響は大きかった。衝撃的な内容は瞬く間にSNS上で拡散し、「熊本・旅館破壊事件」のさらなる真相を追及する機運が高まった。そして、当時現場にいた選手たちが、求められるままに続々と騒動の顛末を語り始めたのである。
各種インタビュー、著書、対談・トークイベント、YouTubeなどでこの事件に言及している選手、関係者は、すぐに確認できるだけでも15名以上に及ぶ。
アントニオ猪木、坂口征二、藤波辰爾、武藤敬司、前田日明、藤原喜明、髙田延彦、船木誠勝、蝶野正洋、越中詩郎、ドン荒川、後藤達俊、安生洋二、中野巽耀、AKIRA、田中秀和リングアナ、古舘伊知郎氏…主要な選手、関係者のほとんどが、この事件を語っていることになる。
実際、この伝説についてはプロレスファンの関心も高いと見られ、昭和世代に活躍した選手のトークイベントなどがあると、司会者が「そういえば昔、熊本の旅館で…」と話を振り、面白おかしく語られるのが定番化している。事件の主人公である武藤敬司が「この事件はもう語り過ぎて飽きた」と嘆くほどのキラーコンテンツだ。
古舘伊知郎氏の驚くべき告白「実は、現場にいなかった」
ところが2021年に入り、驚くべき告白がなされた。前田日明のYouTubeチャンネルにゲストとして登場した古舘伊知郎氏が「実は、あの旅館破壊の現場に自分はいなかった」と、自ら虚言を認めたのである。
話を「盛る」のはともかく、見てもいない光景を自分の目撃談として語るのは、誇張のレベルを超えているように思う。しかも古舘氏は、猪木の横に座ったり、旅館の女将に弁償を懇願されたり、UWF勢が宿泊先に帰るためのタクシーを自ら呼んだとも語っている。伝聞以上の話を大量に「創作」しているのは明らかだろう。
以前から「古舘さんがその場にいた記憶がないんだよな」と語っていた選手は多かった。旅館側も「古舘さんはいませんでした」と断言している。当日の水俣大会はもちろん、その前日、翌日の試合も生中継、テレビ収録はなかった(当時は月曜日に生中継があり、水俣大会は金曜日だった)。当時、テレビ朝日のアナウンサーとして忙しく活動していたはずの古舘氏が、実況の仕事もないのに九州巡業に帯同していること自体がそもそもおかしい話だったのである。
後に詳しく検証するが、古舘氏が番組で語った内容のほとんどは旅館側に否定されている。古舘氏は、自分がその場にいなかったことを告白した後も「事件が起きたのは熊本県の人吉市」などと事実と違う言説を振りまいているのだが…。