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「本当に性的被害に遭った人間は笑うことができず、下を向いて、表舞台に出ず暗い表情で生きているはずだ」という「正しい被害者像」を勝手につくり出し、「その姿にそぐわない人間は嘘を吐いているに違いない」という自己保身のための稚拙な詭弁で、被害者をさらに傷つけ、侮辱したのだ。

 このように、性的被害を受けた人が「被害者らしい振る舞い」を強要されることがいかに暴力的であるか、私たちは慎重に考え、こうした行為をいちいち否定していかねばならないのではないか。

「ニルヴァーナのアルバムの赤ちゃん」だった男性が過去に「自分でネタにしていた」かどうかは訴訟に関係のないことであり、議論されるべきは「アーティストのアルバムのジャケットとして、たとえ両親の許可があったとしても、自分が意思決定/表示できない年齢であったにもかかわらず全裸の写真を勝手に使用されたことが性的搾取にあたるか否か」、そしてその性的搾取によって「生涯にわたる損害を受けたとみなされるかどうか」であるはずだ。

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「被害の自覚に時間がかかりすぎ」という指摘

 この件について私が投稿したツイートには、案の定、地獄のようなリプライが寄せられた。

 なかには「25歳の時点でネタにできたのに、30歳になった今になって性的被害を自覚したというのはさすがに無理がある」という内容のものも少なくなかった。

 しかし、私はこの意見について、明確に否定しておきたい。虐待や性的被害、DVを受けていた人が、「自分が被害を受けていた」と自覚するまでに長い時間がかかることは決して珍しいことではない。特に幼少期に受けた被害の場合、本人が被害を自覚し、認められるようになるまで数十年かかるケースもある。

 私自身も、幼少期に受けていた虐待や性的被害を自覚できずにいた当事者の一人である。私は今年30歳になったが、親から受けていた虐待を認められるようになったのは29歳のときのことだ。成人してから受けた性的被害ですら、「あれは性的被害だった」とはっきりと自覚できるようになるまで数年を要した。

「自分が被害に遭ったことを認めること」は簡単ではない。被害者にとって被害を自覚することは、トラウマとなっている事象から目をそらさず、苦しみながら向き合うことである。この行為には大変な苦痛を伴うため、カウンセリングを受けたり、専門家の指導のもと治療を行うのが望ましい。

 親をかばい続けてきた私が「自分は虐待を受けていた」と認められるようになったのは、カウンセリング治療を始めてから1年が経過したころだった。さらに、成人してから受けた性的被害については、話そうとすれば涙が出て止まらなくなるため、まだ臨床心理士にさえ話せていない。