参加者は18年までに7000人超...千人計画とは
千人計画とは何か。前身は、1990年代に行われた、海外の中国人留学生を呼び戻して先端技術を中国国内に取り込む「海亀(ハイ グイ)政策」だとされる。中国では海外から帰ってくるという意味の「海帰」と発音が同じであることから、帰国した留学生を「海亀」と呼んでいる。中国はその後、2020年までに世界トップレベルの科学技術力を持つイノベーション型国家へ転換することを目標に掲げ、その実現に向けた取り組みの一環として外国人研究者の招致を含む千人計画を08年にスタートさせた。
関係者によると、千人計画には、「創新」「創業」「青年」と「外専」の4つの種類があるという。最初の3つは主に、海外にいる中国人研究者を呼び戻すもので、創新は学術分野、創業はビジネス分野が対象だ。青年は、応募時に40歳以下などの年齢制限があったという。最後の外専が、外国人研究者を招致する事業だ。名前は千人計画だが、中国人を含めた参加者は、18年までに7000人を超えているという。
これとは別に、各省が独自に行う千人計画もある。44人中少なくとも3人は、省の計画への参加・関与だった。
手厚い待遇「5年で2億円」
潤沢な研究資金や給料、手厚い福利厚生──。千人計画の特徴は、破格の待遇だ。
「千人計画の5年分の研究費約2億円と、中国の科学技術研究費からさらに4800万円を受け取った」
北京航空航天大で教授を務める日本人男性はそう明かした。
男性が千人計画に参加したのは、日本でかつて同じ研究室に所属した同大の中国人研究者から、「日本やドイツが先行する原子核物理学の実験や研究を中国でも始めたい」と誘われたのがきっかけだった。「長年取り組んだ研究をアジアに広げたい」との思いで、10年から千人計画に参加した。
与えられた研究室では中国人の学生ら10人ほどを指導し、併任していた日本の大学との共同研究も実施。年間の半分ほどを中国で過ごし、研究費のほかに給与も受け取った。任期を終えた後も北京航空航天大に残り、研究を続けている。
「数千万円の研究費が支給され、使い道がなくて困るほどだった」
こう明かすのは、北京の大学の元教授だ。大学では日本語が堪能な秘書が付き、永住権の付与や、無料の人間ドックなどの特典もあったという。