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口コミサイトは間違いだらけ…東秋留の“昭和から続く中華料理屋” 「550円のラーメン」は王道の味だった!

B中華を探す旅――東秋留「かんた楼」

2021/11/11

genre : ライフ, グルメ

note

「橋ができて、淋しくなっちゃった」

「製麺屋さんにいたころ、ラーメン屋さんに配達してたら、昔の感覚がなんとなく蘇ってきてね。そのときは全然開業なんていう頭はなかったんだけど、麺を納めてた店の旦那から、『こんな場所があるんだけどどうかな』なんて話が出てきて、それがここだったんです。そのころは、30歳を少し過ぎてたかな。そんな感じで、ちょっと修業させてもらってからオープンして」

 開店は昭和の終わりで、当時は近隣に商店が並んで活気があった。通勤する人も店の前を通って東秋留駅に向かっていたが、大きな橋や道路ができた結果、人の流れが変わってしまった。「橋ができて、東秋留のひとつ先の秋川駅がメインになっちゃってね。この辺は置いていかれて。こんな形でラーメン屋で残ってるのはうちだけになってね。なんか淋しくなっちゃった」と笑う。

 
 

 ずっと、店舗がある建物の二階にひとりで暮らしている。インターネット上には「夫婦で店を営んでいる」旨の記述があるが、女性はパートタイマーで、北林さんは独身。いくつかの出会いはあったものの、結果的に世帯を持つことはなかった。

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「きょうだいは男3人で、真ん中で。考えてみれば、一番好き勝手なことばかりさせてもらってるというか」

グルメサイトの書き込みは間違いだらけ

 ところでネットといえば、書いておくべきことがある。大手グルメサイトにある書き込みが間違いだらけなのだ。北林さんはネットをやっていないが、常連客にずいぶん指摘されたのだとか。

「そこにはだいぶトンチンカンなことが載ってるから。お昼しかやってないとか、5時で終わっちゃうとか。営業日が週2日だとか、全然そんなことしゃべったこともないし、聞かれたこともないんだけど。どうしてそういうのが載ってるのかなあと思ってね。だから、ずいぶん尋ねられましたよ、『きょうは○曜日だけど、やってますか?』と」

 営業時間は厳密に決めていないものの、12時から8時くらい。コロナの影響もあるが、だいたい8時までは間違いなく開けているそうだ。定休日は金曜日。毎朝、ラーメンの出汁をとるところから仕事はスタートする。

 
 

「そこらへんはやっぱり、いちばん手を抜けないところで。スープは鶏と豚。若い子に『ああ、これ、昔の味だ』なんていわれると、何年前の話なんだっていいたくなっちゃって(笑)」

 そんな、若い子に“昔の味”といわせるラーメンを頼むことにしようか。ただ、メニューにある「ラーメン・チャーハンセット」も気になる。「両方とも、そこそこ1人前ずつの量になっちゃう」ということなので明らかに食べ過ぎになるが、せっかくだから頼んでみることにする。