トップが次々と入れ替わる大混戦になった今年の全日本大学駅伝。どのチームが勝ってもおかしくない展開のなか、駅伝マニア集団「EKIDEN News」の西本武司氏は4つの大学に注目。そこから箱根駅伝の注目ポイントが見えてきたという。(全2回の2回め/前編から続く)
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初めてシード権を逃した東洋大学
まずは東洋大学です。
酒井俊幸監督が就任して以来、初めて東洋大学が全日本大学駅伝のシード権を逃しました。6区で菅野大輝選手の足が痙攣するというアクシデント、7区でさらに順位が後退し、シード権に52秒届きませんでした。
近年の大学駅伝を特徴するような結果です。全体的にスピードのレベルがあがったことで、駅伝のメンバーに選ばれるようなランナーの走力に大きな差がなくなった。そのためひとつミスをすると、リカバリーが難しい。
今回の全日本大学駅伝は首位がつぎつぎと入れ替わる。駒澤、順天堂、東京国際、早稲田、(そして青学がトップと併走)東洋大は終盤6区のアクシデントであったため、すべての負債をアンカーのキャプテン宮下隼人選手が背負う形となってしまいます。
宮下選手は2代目山の神・柏原竜二さんに憧れて「東洋大学で箱根5区を走りたい」と入学してきた選手。5区を走るためには、スピードよりも強さがもとめられます。つまり長い距離を押していく力はあるが、一気に差を縮めるようなスピードランナーではないということ。
腕にはデカデカと「その1秒をけずりだせ」
さらに10月の出雲駅伝では、足の状態が万全ではなく、宮下選手はエントリーを外れました。
足に不調を抱え、山登り職人である宮下選手が、7区までの遅れを挽回し、シード権を獲得するために必死で前を追いかける。1つ順位はあげたものの、シード権には届かずゴールした宮下選手の右足はテーピングでグルグルになっていました。そして腕にはデカデカと「その1秒をけずりだせ」の文字。
辛い状況にあっても、シードを落としちゃいけないという強い思いが、彼をゴールまで走らせたのでしょう。キャプテンはその大学の思想を体現できる選手がなるものですが、彼は本当の意味で東洋大のキャプテンなんだと心が熱くなりました。
ちなみに東洋大ファンの方々へ。全日本でお会いした酒井監督。「あのオセロは血糖値を測定するものなのです。レース前後の血糖値を図ってデータ分析してるんですよ」と、先日、出雲駅伝で聞きそびれた東洋大選手の二の腕に貼られるオセロについて解説していただきました。今回もやっぱり見惚れるぐらい格好良かったことをお伝えしておきます。