この時の加藤はすでにA級八段で、タイトル挑戦も2回あった。現役最年少の棋士が順位戦A級に在籍していたのは加藤を除いて例がない。また加藤と同学年で、次いで棋士になったのは内藤國雄九段(誕生日が2ヵ月ほど加藤より早い)だが、内藤が四段昇段した1958年10月1日の時点で、すでに加藤はA級八段だった。まさに「神武以来の大天才」である。
加藤の次に長いのは森安秀光九段(1968年4月1日~1972年4月1日)と藤井聡太竜王(2016年10月1日~2020年10月1日)で、両者ともにちょうど4年間。以降は谷川浩司九段(1976年12月20日~1980年7月2日)、渡辺明名人(2000年4月1日~2003年10月1日)、阿部光瑠六段(2011年4月1日~2014年10月1日)と続く。当たり前だが中学生棋士の名前が並ぶ。
現役最年少でタイトルを獲った屋敷、藤井
もう一人の中学生棋士である羽生善治九段は、現役最年少の期間でみるとそれほど長くない(1985年12月18日~1987年5月13日)。代わって現役最年少となったのが、終生のライバルともいうべき森内俊之九段である。
では、それぞれの棋士が最年少の時期にどれだけの実績をあげたのかを見ていこう。その期間中にタイトルを獲得したのは、屋敷伸之九段と藤井竜王の2人しかいない。屋敷九段が初めてタイトルを獲得したのが1990年8月の棋聖戦。18歳6ヵ月での獲得は、前年に羽生九段が竜王奪取した19歳を更新する、当時の最年少タイトル獲得記録だった。
その記録を藤井が30年ぶりに更新したのは記憶に新しい。2020年7月の棋聖戦、8月の王位戦で立て続けにタイトルを奪取し、二冠王となる。この直後に伊藤四段がデビューしたことで、藤井は現役最年少ではなくなるが、最年少時に二冠奪取も当然ながら前代未聞、あるいは空前絶後かもしれない。