原子力発電に賛成ではないものの
もちろん、私も原子力発電に賛成かと言われれば、処理に10万年かかるような核廃棄物の処理をいまの世代が必要だからとじゃんじゃん生みだして良いかと言われたら、それこそ持続可能じゃないよなあという意味で、消極的に反対です。だって、トンガと同じように地震多発国で、活火山も多い我が国で、10万年後の未来まで安全に核廃棄物が地中深くに埋められる場所なんてあるようにも思えません。核廃棄物を埋めた場所の近くで火山がどーんと大爆発したらどうなってしまうのでしょうか。
ただし、いま目の前の電力消費がこれだけある中で、化石燃料はだめ、再生エネルギーもすぐには代替できない、じゃあどうするかと言えば、きちんと縛りを作って原子力発電所を事故らないように運用して、核のゴミがどうにかなる技術を何とか開発できるまではしょぼしょぼやっていくほかないのではないかと思っています。
原発再稼働の議論が大事なのは、福島第一原発事故が10年のときを経て私たちに投げかけている問題のみならず、エネルギー政策への国民の向き合い方をどう具体的な政策にむすびつけていくのかが問われているんだと思うわけですよ。太陽光パネル一本槍できた日本の再生エネルギーも再考するべきでしょうし、円安にシフトしている我が国の経済状態で、値上がり一途のLNGや原油石炭の調達のままでいいのかという話もあります。
そんな日本のエネルギー関連議論をよそに、いまや世界中で原子力発電所の建設ラッシュが始まっています。
Asia's Going Nuclear
https://www.statista.com/chart/26439/number-of-nuclear-reactors-currently-in-construction-or-in-preliminary-construction-stages/
現在、欧州では原子力発電が成長産業に
脱原発を叫んでいたはずのヨーロッパでは、建設中の原子力発電所は15基、計画中は37基。また、日本を除くアジア全般で言えば建設中は35基、計画中はなんと56基あるとされます。日本人が欧州のクリーンエネルギーの理念に賛同してSDGsとか言っているあいだに、その欧州では原子力発電はインフラとして成長産業の一部となっていて、世界では洋上風力発電や太陽光パネルと並んで原子力発電も脱炭素の切り札のようになっている現実は直視したほうが良いと思います。
繰り返しになりますが、私も脱炭素の社会にしていくべきだし、原子力発電も長期的影響を考えたら徐々に減らしていくべきという考えには同意します。ただ、いま目の前の電気が足りないという事態で、ガソリン車を全部EVにするんだよとか、再生エネルギーで38%を目指すというような動きが、世界の人たちが無責任に作るルールに翻弄されないようにするべきだ、というのは考えておくべきなんじゃないですかねえ。
そして、今後少なくとも3年間ぐらいは、今回のトンガ火山噴火の影響で穀物生産に悪い影響が起きるだけでなく、日照量の低下で冷夏厳冬が来る可能性も否定できません。否応なく、化石燃料を燃やさないとエネルギーが賄えないよという時代がやってくるとするならば、SDGsとは何だったのかという議論もしておかないといけないんじゃないでしょうか。
INFORMATION
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