「紅しょうが天」には3種類の色があるように思う。やや紫がかった色で赤紫蘇の多い梅酢を使ったタイプ、鮮やかな赤い色で赤紫蘇が少なく食紅が多いタイプ、もう少しピンク色で野菜色素を使ったり梅酢を洗ったり薄めて使うタイプである。いずれも天ぷらケースにあればすごく目立つ。
さらに、そばうどんにのる「紅しょうが天」には大きく分けて4種類の形状がある。「そのまま薄切り天ぷらタイプ」「真紅の細切りのかき揚げタイプ」「ミックスかき揚げタイプ」「進化型コラボタイプ」の4つである。それぞれを紹介していくことにしよう。
意外と少ない「そのまま薄切り天ぷらタイプ」
1つめは「そのまま薄切り天ぷらタイプ」である。これは薄切りの紅しょうが2~3枚をまとめた塊をいくつか串に刺して天ぷらにしたもの。東京ではあまりみかけないタイプである。今回の取材で探したところ、大阪うどんの店「つるまる饂飩新橋店」で食べることができた。串を持ってガブリとかじれば、すっぱしょっぱい真紅のしょうがが現れる。
JR武蔵小杉駅改札外にあるさぬきうどん店「親父の製麺所」にも串揚げタイプが存在していた。こちらもかなりの大きさである。
もっともポピュラーな「真紅の細切りのかき揚げタイプ」
2つめが「真紅の細切りのかき揚げタイプ」である。全国的にはそばうどんにのる最もポピュラーな形状といえる。とにかく鮮やかな赤い色がこのタイプの特徴である。
東京人形町にある「福そば」の「紅しょうが天」は芸術的な揚げ姿と彩りで評判である。もちろん味も絶品。店主に伺うと、衣を多すぎず軽めにつけて、丸い形状になるように揚げるのを心掛けているとか。先日、正月の挨拶がてら「紅しょうが天そば」をいただいたのだが、かつお出汁の利いた奥深いつゆにいつも感心する。そして、菊の花びらのような「紅しょうが天」に箸を入れるとハラハラとほぐれ、食べるとほんのり梅酢の味が口に広がっていく。つゆにもその味が広がりなんともいえない旨さである。また、近所にある「田そば」の「紅しょうが天」も甲乙つけ難いうまさである。
「紅しょうが天」を広めた功労者
さて、東京近郊で「紅しょうが天」を広めたのは「名代富士そば」といってもいい。天ぷらケースの中に真紅の天ぷらが並んでいると、すぐ頼んでしまうわけである。開発企画広報の工藤寛顕さんに伺ったところ、「紅しょうが天」の販売には紆余曲折があったようだ。詳細は不明だが2000~2010年には販売していたそうである。