各国から「通貨の黒船」がやって来るのは時間の問題
また、デジタル人民元が普及すれば、国際的なプレゼンスもあがります。
例えばミャンマーで軍事クーデターがあった時、これまでならアメリカの国際的な決済システムを使っているので、それを使わせなければ経済制裁ができたわけです。しかし、ミャンマーがデジタル人民元で決済し始めれば、経済制裁の意味がなくなります。アメリカと中国の通貨戦争は既に始まっているわけです」
危機の端緒は、デジタル人民元だけではない。
例えばFacebookは価値が安定した「ステーブルコイン」の仮想通貨「Diem」を開発。昨年7月にはGoogleが日本のスマホ決済会社「pring」を買収し、PayPalも同9月に決済会社「Paidy」を買収したばかりだ。
デジタル人民元だけでなく、もはや各国発の通貨の“黒船”がやってくるのは、時間の問題だと宮沢さんは語る。そして、そうなった時、いまの日本には致命的な弱点があるという。
「あまり知られていませんが、日本の金融手数料はかなり割高なんです。それは年間で何千億円も銀行が金融システムに投資しているからです。あっちこっちにATMや銀行窓口があるのも便利ですが、1世帯あたりで年間4万円も負担していることになる。デジタル外資が『手数料は無料です』と言って、顧客情報を取るために国内に進出してきたら、多くの日本人は抗えないと思います」
店側の決済手数料も、諸外国に比べるとかなり割高だ。
問題の根幹にある“銀行の高コスト体質”
日本のクレジットカードは、平均して加盟店の負担が3%。Suicaでは3.25%。安いといわれるペイペイでも1.98%の金額を店側が負担している。
一方、中国のウィーチャットペイやアリペイは0.6%と実に日本の5分の1。欧米でもクレジットカード決済の手数料は平均して1%台だという。
「日本は今、キャッシュレス決済が全体の2割なので大きな問題にはなっていません。ただ、この比率が中国など諸外国のように上がるとどうでしょうか。日本の小売業の経常利益率は平均して1.5%ぐらいなので、決済手数料だけで利益が全部吹っ飛ぶことになります。みんな倒産ですよ」
問題の根幹は、銀行の高コスト体質にある。
「キャッシュレスは、最終的に銀行で決済するわけです。決済の過程でいくつもの銀行を経由します。銀行は支店をたくさん抱えています。支店には人もいる。建物もある。ATMもたくさんある。そうしたコストを全て送金手数料に上乗せしているので、割高なんです。もちろん問題があることは皆わかっているんですが、潰すわけにもいかないのでしょう。