日銀が動かないのは…あの業界への「忖度」のため?
海外はもうスマホの時代で、手数料ゼロの支店を持たない『スマホ銀行』がたくさん生まれています。従来の大きな銀行は『決済手数料は収益をあげるところじゃない』と、ATMも支店もどんどん減らし始めています。ところが日本の銀行首脳部は、そういう痛みを伴う改革は『自分がいなくなった後にやってくれ』という思いが強い。10年後、20年後なんて考えないわけです。こういうシステムを作ってしまった以上、変えられない。まさにイノベーションのジレンマです」
では、そんな閉塞感を理解しているにもかかわらず、中央銀行である日銀がデジタル通貨開発の音頭をとらないのはなぜなのだろうか?
「金融業界への忖度というのもあると思います。日銀がデジタル通貨をやると、銀行の支店やATMも無駄になります。さらに言えば、銀行預金よりも日銀のデジタル通貨の方が安全だといって、利用者が減る可能性もあります。本来的にはそうならないように、銀行が工夫して解決を図るべきだと思いますが、日銀としてはやはり銀行を敵に回したくないから、動けないのだと思います。
だから黒田総裁も『中銀デジタル通貨は発行しない』というのでしょう。ただ、アメリカがやり始めれば、日本も追随せざるをえない。だから『技術検証だけはしておこう』というところで落ち着いている状況です」
日銀がやらないなら、民間で立ち上がるしかない――。
そう言い残して、宮沢さんは話を終えた。
ソラミツはカンボジアのほか、昨年10月からはラオスとも中銀デジタル通貨の発行検討を始めた。また、昨年12月にはフィジー、ソロモン諸島、トンガ、バヌアツの4カ国が同様のテーブルに就いている。他にも25カ国と現在、検討を進めているという。
このままでは、日本だけが“ガラパゴス”と呼ばれる日がやってくるのかもしれない。
インタビュー撮影=上田康太郎/文藝春秋