「自衛隊が市民の避難に船や車を出す余裕があるとは思えません」
無人の尖閣諸島や海上ではなく、人が住んでいる場所への攻撃があった場合はどうなるのだろうか。
「日本は島国なので、突然軍隊が上陸してくるという可能性は低いです。ウクライナのように市街戦になったり、市民が巻き込まれたりする戦闘がいきなり始まることは考えづらい。そもそも現代の戦争では、ミサイルや軍隊の侵攻のような直接的な攻撃の前に、数カ月前から国境付近で軍事演習が行われるなど準備段階が存在します。自衛隊は電波情報なども常時傍受していますから、侵攻の気配は察知することが可能でしょう。衛星や無線の情報などから危険エリアを絞り込み、まずは自衛隊も演習という名目で内地の部隊を集めて対応にあたると思います」
“演習”という名目で集まった自衛隊と他国の部隊が、国境(海)をまたいで睨み合いとなる。そして攻撃の始まりは、実は日常のちょっとした異変から始まるという。
「おそらく最初の異変は“インターネットや電話が使えなくなる”ことでしょう。これは攻撃の準備として通信網を遮断したことによるものです。同時にマルウェアなどのコンピューターウイルスが日本の各省庁や大企業に送りこまれることが予想されます。そのうえで日本の“反撃力”を削ぐために巡航ミサイルなどでレーダーサイトや航空基地を攻撃し、自衛隊の迎撃能力を無力化する。制空権や制海権を確保した後に、兵士や戦車が上陸という手順が予想されます」
敵国の上陸が始まれば、一般市民の被害も出かねない。一般市民の避難が急務だが、山下氏は「早期に住民避難を行う必要があります。作戦準備に入れば自衛隊にその余力はないだろう」と悲観的だ。
「自衛隊は人員や装備が豊富とは言い難いので、敵国の上陸が迫った状況では防御陣地の構築など作戦準備に忙殺されて市民の避難に船や車を出す余裕があるとは思えません。なので住民の避難は主に自治体の役割になります。ただ場所にもよりますが何千、何万という人間を避難させるには、膨大な量の車両・船舶や航空機などの輸送手段の確保と時間が必要です。試算している自治体もあるのでしょうが、実際に大規模な避難訓練を行っている自治体はありません。いざという時にスムーズに避難できるかは未知数です」