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侵略してくる部隊を撃退することは自衛隊単独ではほぼ不可能

 住民の避難などを含めた自衛隊や自治体の対応の“難易度”が、戦端が開かれた場所によって大きく異なるという。

「北海道は大きいですから札幌や函館の方へ向かって車や鉄道で避難できますが、離島は船舶や航空機が必要で難易度が跳ね上がります。万が一逃げ遅れてしまった場合は、鉄筋のビルよりも地下道や洞窟などに逃げるのが助かる可能性が高いかもしれません。敵国が国際法を守ってくれる前提ではありますが、建物や洞窟の入り口に赤十字のマークを貼って、非戦闘員であることをアピールするのも大事です」

 国民が避難できない事態などはなんとしても避けたいところだが、防衛作戦とともに住民の避難など自衛隊に期待される役割の多さに比べて、自衛隊の戦力が少なすぎることが問題だと山下氏は指摘する。

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「日本の軍事費は世界9位ですが、自衛隊は即応予備自衛官等を入れても全部で約25万人、戦車はたったの300両と、島国という事情を考慮しても数が圧倒的に少ないんです。中国人民解放軍は200万人の兵士と5000両以上の戦車を有していると言われているので、いかに少ないかがわかるでしょう。現在の自衛隊の戦力で、侵略してくる部隊を単独で撃退することはほぼ不可能です」

自衛官時代の山下氏(右)

 山下氏が現役時代に考えていたのは「陸上自衛隊は侵攻してきた敵に勝てないが、負けない戦いを行う」ことだという。

「私が現役の自衛官だった頃、部下によく言っていたのは“時間を稼ぐ”ということです。『我々が血だらけになって国土を守る。敵に多大の出血(犠牲)を強いて簡単には占領できないと分からせる。力戦奮闘する自衛隊・日本を見て米軍が来援してくる。それまで我々は持ち堪えなければならない。その後、日米で反撃し侵攻した敵を追い返す』と。他国の攻撃を受けてから、米軍が参戦を決意し、準備して実際に戦闘に参加するまでかなりの時間がかかると思います。在日米軍のなかで即応戦力として期待できるのは沖縄の海兵隊と横須賀の海軍です。陸軍は米国本土の部隊であり、予備役の動員や装備・弾薬の輸送など準備に時間を要します。それまで陸上自衛隊が頑張らなければならないのです」