自らを“B級スポットお遍路さん”と称するあさみん氏が、これまでに訪ね歩いた商店街はなんと300以上。この度、その中から厳選したスポットをまとめた『商店街さんぽ ビンテージなまち並み50』(学芸出版社)を著し、レトロファンを中心に話題を呼んでいる。ここでは、惜しくも同書には掲載されなかった広島県呉市の商店街を散策した際の思い出を紹介する。(全4回の4回目/はじめから読む)

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海上自衛隊と造船のまちで歴史を重ねた商店街

 広島駅から電車で30分。呉市の商店街も強く記憶に残る。

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道幅の広いアーケード商店街「れんがどおり」。交差点ごとに名前の違う商店街と交わる

 海上自衛隊と造船のまちでは、海の方向にコンテナクレーンがいくつも見え、街の背景に力強さを感じる。駅から1kmほど歩いた街の中心地には、広範囲で商店街が広がっていた。道幅の広いアーケード街、れんがどおりに入ると交差点ごとに商店街と交わる。

「やよい通」にはどことなく懐かしい雰囲気が漂う

「やよい通」「三和通」「麗女通」商店街にはそれぞれ通り名のついたゲートが立ち、見比べるのがおもしろい。「パルス通り」には大きな客船のような、随分と凝った作りのオブジェが通りをまたいでいる。

 
パルス通りは通りをまたいで飾られた船のオブジェが特徴的

 それぞれの商店街には無数の飲食店が並び、その間からまた別の路地につながる。街の規模に対して店の数が多いことから、かつての賑わいが想像できる。

呉有数の歓楽街「有楽街」
通りにせり出た雑居ビルのテナント看板には味わい深い書体が並ぶ

 有楽街と書かれた歓楽街エリア。雑居ビルから突き出た、狭い路地を塞ぐほど大きな看板が目につく。看板の周りには電球が並び、3面に渡ってテナントの名前が書かれている。それぞれの文字が個性的で、何度でもじっくり鑑賞したい。

ネオンに染まる通り

 飲み屋が賑わい出す頃、有楽街の一角でぼんやり光るネオン管があたりを赤く染めていた。

夜になるとどこか妖しげな雰囲気も

「キャバレー アカプルコの海」おそらく昭和のころから変わらない姿で佇んでいる光景に目を疑う。入り口に貼られたポスターによると、どうやら最近復活したようだ。この日はあいにく臨時休業だったが、男性料金に比べ女性は安く飲めることを覚えておく。

 アーケードの下を歩いていると、六角柱のサンプルケースの中で、くるくるとメニュー写真が回る喫茶店を見つけた。

地元民が集う喫茶店

 入り口周りには手書きで書かれた様々なジャンルのおすすめが並び、まるでファミレスのようだ。ここだと決めて入ると、愛想のいいママさんが奥から出てきてくれた。モーニングセットでトーストを頼むと「トーストは家でも作れるからこれがいいわよ」と、ホットサンドをおすすめされる。半ば強引だがそれがまた楽しい。どこにでもあるカフェより、ここにしかない喫茶店でお店の方と触れ合うのは、地元の人に仲間入りしたような気分になれる。

写真:あさみん

【はじめから読む】〈嘘みたいな絶景〉富士山を仰ぎ見る日常…山梨県富士吉田市の“ローカル商店街”を訪ね歩いてみた

商店街さんぽ ビンテージなまち並み50

あさみん

学芸出版社

2022年3月30日 発売

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