「優秀な人」を集めるためにやったこと
ハブスポットの成功の秘訣について、「企業カルチャーだ」というブライアンの回答は最初から現在まで変わっていない。
グレイトフル・デッドから影響を受けたブライアンは、ハブスポット社を創業したときから、特別な企業カルチャーにもとづいて会社を創って育てることを決意していた。
「企業カルチャー」を硬く表現すると「社員が共有する信念、価値観、慣習」である。でも、ブライアンは「上司がいないときに、個々の社員がどう行動し、どう同僚を扱い、どう決断するべきなのかを示す不文律」と噛み砕いて説明してくれた。
企業を作るのは社員だ。優秀でやる気がある社員1人のほうが、無能で無気力な社員数人より会社にとって良いのは当然のことなのに、社員を大切にしない企業は多い。せっかく優秀な人を雇っても、大切にしないと辞められてしまう。会社にとって最も効率が良いのは、「優秀な人が就職を希望し、社員がやる気を出し、長くとどまりたくなるような環境を作る」ことだ。
その環境が企業カルチャーなのだと言う。良い企業カルチャーを作るのは会社の成功のために最も重要なことなのに、重視している企業はあまりない。自分自身が長年社員として働き、ベンチャー投資会社勤務経験もあるブライアンは、多くの企業が時代遅れの企業カルチャーをいまだに引きずっていることに気づいていた。
ブライアンの父親の時代には、社員をいかに管理するのかを語る「マネジメント」の方法が重視された。そして、ブライアンの時代には社員を率いる「リーダーシップ」がマントラになった。
また、終身雇用制を信じていた1970年代の社員にとっては「年金」が仕事を頑張る理由であり、90年代の社員にとっては「高給」が仕事のモチベーションになっていた。
でも、現代の若者たちはちがう。ミレニアル世代のアメリカの若者たちをやる気にさせるのは「意義がある仕事をやる」というインスピレーションであり、学び、向上する意欲なのだ。
そんな若者たちを70年代や90年代の企業カルチャーで管理し、率いると、彼らは飽きてしまい、やる気を失う。それではせっかく優秀な人材を集めても役には立たない。