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「無傷の小石よりも、傷があるダイヤモンドのほうがいい」

 ハブスポット社共同創業者のブライアンとダーメッシュ・シャアが基盤になるルールを作り、それに社員が付け加えてきた2015年時点での「常に現在進行中」のハブスポット企業カルチャーの例をあげてみよう。

・好む、好まざるにかかわらず、企業カルチャーはできてしまうもの。どうせなら自分たちが愛せるカルチャーを作ろうではないか。
・管理職の独裁制ではなく、個々の社員の自律性を信じる。
・雇う社員の選択には、とてもうるさい。
・「現状維持」の姿勢には常に疑問を投げかける。
・売りつけるのではなく、顧客の問題を解決してあげる。彼らを幸せにするためだけではなく、成功のために。
・知識や情報を独り占めするのではなく、共有することでパワーを得るのが現代のやり方だ。
・“Sunlight is the best disinfectant.”(太陽光は最も効果的な消毒剤。つまり、徹底した企業の透明性)。
・少数がやった失敗で全員を罰したりはしない。
・勤務日数や時間の長さより、出す結果のほうが重要。
・能力がある社員は方向性の指示を求めるが、やり方の細かい指示は要らない。
・無傷の小石よりも、傷があるダイヤモンドのほうがいい。
・失敗を恐れてトライしないより、何度も挑戦して失敗するほうがいい。

 ボストンの家具製造会社が工場に使っていたレンガ造りのビルをそのまま利用したハブスポット社のオフィスには、アメリカのテレビドラマに出てくるような、パーティションや管理職向けの豪華な個室なんかはない。CEOブライアンの机は平社員の隣にある。

 そもそも、ここには個人に与えられた机が「仕事場」という発想がない。座ってばかりで健康に良くないと思ったら立って使えるデスクを利用すればいいし、静かな場所で集中したいときには空いている個室を使える。小プロジェクトのミーティングでは、カフェテリアのようなブースで気軽に集まる。朝型の人は早朝出勤、夜型は夜に頑張るスケジュールを自分で立て、子どもやペットが病気なら自宅で仕事をする。

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 休みたいとき、上司にいちいち言い訳をする必要もない。だいいち、この会社には「有給休暇」とか「病気休暇」という制度がないのだ。「それはひどいではないか!」と憤るのは早とちりだ。好きなときに好きなだけ休暇をとってもかまわないので、日数や用途に制限がある休暇制度がないのである。