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山川 今は、お客さま全員に対して「暴力団ではありません」という書面にサインしてもらいます。我々はちゃんと確認したよ、と。ただそれでも、途中で暴力団ということが判明したケースがありました。最初は彼らも「政治結社です」って言い張ってたんだけど、どう見ても、ご遺体にものすごい入れ墨ありますよね、本当ですかって。

写真はイメージです ©iStock.com

――それでどうしたんですか。

山川 知ってしまった以上、警察に連絡しました。実際のお葬式の時には、警官が3人やって来て、別室のモニターで見張っていましたよ。

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――緊張感が漂います。何か“事件”は起こりましたか。

山川 警察案件はなかったのですが、お葬式の前に、「値切れ」と上半身裸で凄まれまして、ちょっと怖かったです。あまりにも無茶を言うので、お前らヤクザかって思ったけど、ヤクザだし(笑)。

 私は司会だったんですが、絶対に噛んだり、序列を間違えたりできない。何かしくじったら、そこをつつかれて、また値切る話が出かねないですからね。無事終えられた時には、本当にホッとしました。

珍事件その3:元軍人がお経中に“突然の殴り込み”

――戦争世代が亡くなっていく時代でもあります。

山川 戦争に行った男性では、同期が亡くなると弔辞の“殴り込み”をする人たちがチラホラいましたね。

――戦争体験世代。今の90代以上ですね。

山川 弔辞って、あらかじめご遺族や喪主からお願いして、当日は葬儀屋さんと読むタイミングや内容について打ち合わせをするんです。

 でも軍人の間では、「お前が死んだら、弔辞は俺が読んでやるからな」っていう誓いをする風習があって。こちらとは何の段取りもしていないのに、ただただ「自分が読まなきゃ」という意志だけが強く残っている、ということがあるんです。

――使命感。

山川 お焼香をした後、急に紙を取り出して、大きな声で読み始めるから、お坊さんも驚いてお経をあげるのを一瞬止めてしまう。最初は私も戸惑いましたが、2回めからは、冷静に「マイク持ってきました」って、読ませてあげることにしました。そういう弔辞は決まって長文で、満州で機関銃を打ちまくった……みたいな思い出が語られるのが特徴ですね。