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「いてまえブルーサンダー打線」の夢を…拝啓 福良GM様、今秋のドラフトでスラッガー5人指名しませんか?

文春野球コラム ペナントレース2022

2022/06/29

 プロ野球チームにはそれぞれ「お家芸」と言うべき伝統的特徴があるように思う。例えば今や球界最強のチームに登り詰めたヤクルトスワローズは伝統的に「強打のチーム」であり「生え抜き重視の育成型チーム」である。それゆえ育成の狭間の時期や故障者が続出してしまうとBクラスや最下位に転落することもよくある。

 が、そんな年でも「貧打」で苦しむことはあまりない。苦しむのは大体「投壊」だ。パワーとスピードを重視するパ・リーグが昭和の野球スタイルに固執していたセ・リーグを投打共に圧倒する時代が長く続いたが、セ・リーグの中で真っ先に全野手フルスイング&パワーベースボールに転換したのもやはり強打が「お家芸」の真中ヤクルトであった。あの時のヤクルトの方針転換こそが今のセ・リーグ復権の大転換点であったと個人的には信じている。

パ・リーグ各球団にある「お家芸」…オリックスの「お家芸」とは?

 パ・リーグに目を移してみると、プロ野球界の盟主ソフトバンクホークスは故・根本陸夫氏、孫正義オーナー、王貞治会長が作り上げた現代プロ野球の理想郷である。圧倒的な資金力とブレることのない球団の大戦略によりドラフトで獲得した数多くの逸材を筑後のハイレベルな施設で徹底的に鍛え上げるのが「お家芸」であり、鋼のような心身を身につけた強者たちが投打共に溢れかえり虎視眈々と出番を待っている。さらには日本一になるためにどうしても必要なピースがあれば巨額のFA・助っ人獲得も辞さない。

 パ・リーグの古豪、埼玉西武ライオンズはホークスと同じく一大帝国を築きあげた球団であり投打のバランスが素晴らしかった時代も多いがどちらかと言えば西鉄ライオンズ時代から伝統的に「強打のチーム」であり「生え抜き育成型」でもある。「豊田・中西」「秋山・清原」「中村・山川」など球界を代表する強打者育成こそが球団草創期から続く「お家芸」であり、同時に脇を固める選手たちの圧倒的な走力とチャンスを逃さない集中力に長けた「試合巧者」であることも「お家芸」である。生え抜きの選手育成手腕は球団経営が厳しくなって以降も衰えることはなく、主力選手がFAで何人流出しようとも次々と穴を埋める育成の力強さは見事という他ない。

 千葉ロッテマリーンズはボビー・バレンタインが率いて以降はアグレッシブな走塁と畳み掛ける集中打でビッグイニングを作り、盤石の守備とブルペン陣でリードを守り抜くのが「お家芸」。ファンの不満としてはかつて有藤、落合、初芝、堀などの生え抜き強打者を育成してきた伝統がここ20年途絶えてしまっていることか。

 日本ハムファイターズは伝統的に「強打のチーム」であり投手力に不安を抱えている時代が多かった。北海道移転以降は強気と強運のドラフト戦略と独特の生え抜き育成力、さらには監督・GM・球団本部が役割分担する大リーグスタイルが「お家芸」……だったが近年はその「お家芸」に制度疲労が見られるのが残念。

 楽天ゴールデンイーグルスはまだ歴史が浅いので伝統的特徴である「お家芸」を語る時期ではないのだが、強いて言えばドラフトの強運と他球団の有力選手引き抜きが現時点までの「お家芸」であり、野村監督が去って以降は生え抜きの野手育成をやや苦手としている。

 こうした各チームの伝統的特徴「お家芸」というものは一朝一夕では変わらないし安易に変えてはならないものだ。それは風土や文化と同じようにチームの土台に染み込んでいるもので、根付かせるのに何世代にも渡る監督・選手の努力と長い年月を要するからだ。万が一これを失えば、その「お家芸」を取り戻すのには作り上げた時の2倍3倍の労力や年月がかかることはあらゆる歴史が証明している。

 それと本題に入る前にここで一つご説明しておかねばならないことがある。僕は個人的に人間が紡いできた「歴史」が大好きだ。日本史、世界史からハンバーガーショップの歴史、漫画史に至るまで「歴史」とは僕にとっては人々の営みや喜怒哀楽が詰まった宝箱である。ゆえにプロ野球史も中学生時代から散々書物を漁り、長年観察し楽しんできた大好物なのである。もちろんオリックスファンなので阪急・オリックスの歴史は特に念入りに観察してきたつもりだ。

 そこで今回の本題である。我らがオリックス・バファローズの伝統的特徴「お家芸」って何なのだろう?

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