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 とはいうものの、簡単な作業で検索のトップに自分のサイトを送り込めるような時代はすぐに過ぎ去る。1998年、Googleが、ページ同士の参照量に着目した「ページランク」という技術を武器に検索サービスを本格的に開始すると、世界は一気に変わっていった。

 辻さんも就職し、検索エンジンで「遊ぶ」ことよりも日々の仕事に追われる生活になる。2000年代に入り、辻さんは広告業界でウェブ制作に携わるようになっていた。ウェブ広告にとって、ネット検索の上位に出てくることは今も昔も重要な要素だ。そこで、過去に試してきた「検索ランキングを上げる工夫」が重要であることも見えてくる。

 自分で「遊んで」いた頃とは技術も違う。だが、出たばかりの技術書を読みながら検索エンジンの技術を知り、検索エンジンがピックアップしやすいようにウェブサイト作りを工夫していくと、着実に成果が出た。検索で出てきやすくなり、ウェブの訪問者が増えるということは、それがそのまま売上のアップにつながった。

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©iStock.com

「当時はSEOに取り組んでいるサイトも少なかったので、本当に制作側の努力でアクセス数が大幅に変わりました。網走にあるホテルのサイトを作った時に技術書に書いてある通りにやってみたら、アクセス数がみるみる上がる。『鯨』と検索するとそのホテルが3位に出てくるようになったんです。問い合わせに対応できないくらい日本中からお客様が来て、『一度検索から落とそう』という話になったくらいです(笑)」(辻さん)

SEO事業者の9割くらいは“良い会社”とは言えない

 取り組めば結果が売り上げに如実に反映される。そこで辻さんは、真剣にSEOに取り組むために2007年に東京へと拠点を移し、SEOコンサルタントとして活動を始める。2011年に独立し、現在に至っている。

「今は個人でやっていますが、大手のサイトを中心に、私の顧客サイトへの検索流入は5億回を超えるくらいになりました。日本の月間検索量が100億前後ではないかと言われていますから、5パーセントくらいでしょうか。これを10パーセントまであげたい……という野望はありますが現状ではとても手が回らず、新規の仕事は承っていない状況です」(辻さん)

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 辻さんのようにウェブ世界の健全性・効率性を上げたいと願う人がいる一方で、SEOという職種のイメージは必ずしも良いものではない。「検索結果で自社サイトが上位に来るようにする」という行為はつまり「検索結果を操作する」ことで、ややもすると不公正な行為だと感じる人も多いだろう。

「検索経由でのお客さんを増やしたいと思う会社があったとして、SEO事業者の9割くらいは“良い会社”とは言えないので、ゼロから探しても『当たり』はなかなか引けません。私が新しいお仕事を引き受けていないので、『せめて良い事業者の見分け方を知りたい』と聞かれることもあるのですが、『周囲の信頼できる方に聞いてください』としか答えられない状態です」(辻さん)