インターネット上に存在するコンテンツの質の平均は下がっている
ネット検索の「正しさ」という意味で、辻さんは「Google以外の信頼度の低下」を指摘する。
先日、マイクロソフトの検索エンジン「Bing」で、いくつかの官公庁や地方自治体のサイトを検索した場合、トップに別のサイトが表示されるという現象があった。マイクロソフトは「すでに対応した」としているが、公共性が高いサイトを検索して違うサイトがトップに出てくるのは危険な状況だった。
「日本語検索において、Googleとそれ以外の検索エンジンでは、レベルが大幅に違うものになってしまったのは課題だと思います。このままでは、リテラシーの低い人が低品質な検索エンジンを選び、正確でない情報を手にする可能性が出てきます。ワクチンや健康などの情報についても、やはりGoogleはしっかりとした仕事をしています」(辻さん)
ネットには詐欺のために作られたサイトや、刺激的だが誤った情報を掲載して広告費を集めようとするサイトもある。そうしたサイトが目につく場所に出てきてしまい、被害をもたらすことは避けねばならない。
「ネットのトラフィックのおそらく9割以上は、著名な1%のサイトから生まれています。ですから、その1%の信頼性が高い大手サイトの情報が検索結果にちゃんと表示されるようになるだけでも、インターネットの価値は大きく変わると思っています。そういう意味では、私一人がSEOに関わるサイトだけで日本全体の5%の検索流入を占めているわけですから、私がそれらのサイトの価値を高めることができれば、日本語のインターネットのためになるのではないかと思います」(辻さん)
一方で、Googleの検索が大手サイトの情報に偏りすぎていることで、、「個人からの良い情報」が検索で見つかりづらくなっているのは「Googleが改善すべき課題」だと辻さんは言う。
「良い情報、良い文章を評価するのは検索エンジンにとって難しい領域で、実現にはまだまだ時間がかかるでしょう。そもそも、SNSで個人による情報発信が増えた結果、インターネット上に存在するコンテンツの質の平均が下がっているのは事実。Yahooニュースの荒れるコメント欄の問題など、個人の発信を単純に理想化はできません。それでも、個人がインターネット上で情報発信をし、それが検索などを通じて人々の目にふれるのは、『表現の自由』の問題でもある。Googleも、そしてネットを使う私たちもそれを意識的に守っていく必要があると考えています」(辻さん)