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「SEO事業者の9割くらいは“良い会社”とは言えないので…」日本のネット検索の5%を担う第一人者はいかに生まれ、何を目指すのか

辻正浩さんインタビュー#2

2022/08/01
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 それでも辻さんは「SEO事業者のイメージを改善しよう、とはまったく思わない」という。

「SEOはとても重要な業種なのですが、『巨額の契約を結ばせる割にまったく効果がない』などイメージは悪いですよね。一時は『イメージが悪すぎるから良くしなければ』と思い、講演などでSEOの意義を熱弁していた時期もあるのですが、逆に焦って質の良くないSEO事業者と契約してしまう方が出てきてしまい……。今は警告はしていますが、SEO自体のイメージを改善する必要はないと思っています」(辻さん)

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 辻さんは独立以前から、SEO事業と誠実に向き合ってきた。辻さんの顧客になっている大手企業が彼に信頼を寄せるのも、誠実さと結果があった故だ。

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 辻さんの仕事に対する姿勢の根幹になったのは、東京に移ってから所属したSEOの会社での教育だという。

「私が東京で最初に働いた会社は、とてもモラルを重視していました。SEO、すなわち検索に関わる人間がモラルを失ってはいけない、とずっと言われ続けていたんです。私にはそれが染み付いている部分があります」(辻さん)

検索は「意図と情報のマッチング」を実現すること

 我々は検索したら「正しい情報が出てくる」と思い込んでいる。だからSEOは、依頼企業のサイトの検索順位を上げるという「操作」をしつつも、検索される情報の正しさを乱すものであってはならない。これは確かに、非常に難しいことだ。

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「検索とはなにか」という問いに、辻さんは「意図と情報のマッチング」と答える。昔はシンプルなキーワードでの検索だったが、今は色々な条件が加わって複雑化している。

「たとえばスマートフォンが、お昼どきにマップを開いたら何も打ち込んでいなくても近くのランチが美味しいレストランを提案するのも“検索”の一種だと思うんです。人間が欲しいと思う情報、あると役立つ情報にたどり着けることが大切なんです」

 Googleをはじめとする検索エンジン事業者は「理想的なマッチング」をエンジン側から見出そうとしているわけだが、辻さんの仕事であるSEOは逆にサイト側から「理想のマッチング」を探していると言えるのかもしれない。