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ゲテモノではなく「まだ知らない味」

 この本を読んでいる人や動画を観ている人にぜひ感じ取ってほしいと思っているのは「野食は美味しい」ってことだ。

 味だけであれば市販品のほうが美味しい場合もあるが、自分の手で獲った生き物の味には代えられない。苦労して獲った新鮮な生き物をさっと調理して、外の空気の中で食べる。その味は一度経験すると忘れられないものだ。

 野食活動をしていると「美味しいの?」と顔をしかめられることもあるが、実際まずいものは少ない。というか、僕は美味しいものしか食べないのだ。食べ物として僕が好きなセミは、強いて言えばエビの味に近いが、エビだと思って食べると違和感があるだろう。セミはセミの味として受け入れるのが一番美味しく食べられる。

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セミの幼虫を捕まえているところ ホモサピさんのYouTubeチャンネルより

 きっとこれは意識の問題だ。山菜は食べるのに雑草はなぜ食べないのか。エスカルゴは食べるのにタニシはなぜ食べないのか。「これは食べられる、これは食べられない」と勝手に線引きしているだけだろうと僕は思っている。

 海外ではタコの刺身を食べない国も多いらしい。タコの刺身の美味しさを知っている人からしてみたら、「この美味しさを知らないなんて!」という気持ちを抱くだろう。それと同じように、僕からしてみたら、この世に流通するエビの素揚げはすべてセミで代用できる、と言えるほどセミの美味しさには自信があるのだ。

 まだ口にしたことのない美味しさがこの世にあるのなら、僕はその味を全部知りたい。