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すさまじい数の“穢れたお金”を手にした犯人は…

 この事件から数年後、私が宮司を務めるほかの神社――堀兼神社で、賽銭泥棒の被害に遭いました。その日は新嘗祭で、多くの参拝者が訪れていました。その夜、賽銭箱はひっくり返され、その中身は、見事に“もぬけのカラ”となってしまったのです。木野目稲荷神社のときは、被害額は1000円程度でしたが、このときは、その数十倍はくだらない額を盗まれてしまいました。

 額が多かったこともあり、警察に被害届を出したのですが、犯人は捕まらずじまいでした。私は今でも、その泥棒は今、何をしているのだろうか、と考えることがあります。悔しいからではありません。

 すさまじい数の“穢れたお金”を手にしたことで、さまざまな災いが舞いこんで、四苦八苦な目に遭っているのではないか。病気などで苦しんでいるのではないか――それが心配でならないのです。

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 今からでもいいので、堀兼神社に参拝し、賽銭箱に奉納し、あのときの過ちを悔い改めてほしいなと、思います。

©iStock.com

氏子さんの人数が多すぎて…顔を覚えきれなくてごめんなさい

「ほんと、あなたは氏子さんの名前が覚えられないわね!」

 そんな嫌みを、妻から言われたのは、近くのスーパーマーケットで買い物をしてい

 たときのことです。

 きっかけは、ある女性の氏子さんからの挨拶でした。

「こんにちは。先日お世話になった小谷野です」と言われた私は、「ああ、こんにちは」と返しました。

「その節は、御朱印をありがとうございました」

 と小谷野さんが言います。

「いえいえ。ご一緒だった方が可愛らしい笑顔で、なんともほっこりした気持ちになりました」

「そんな。もう可愛らしいなんて年でもないので(笑)」

「何をおっしゃいますか(笑)」

 この時点で、私は、この小谷野さん(A)を別の小谷野さん(B)だと、思って話しています。

 Bさんは、お孫さんと一緒に御朱印所に来てくれたため、私は「可愛らしい」と言ったのですが、このAさんは、お婆さんと一緒に来てくれた方だったのです。

「じゃあ、うちのお婆さんに『宮司さんが可愛いと言っていたわよ』と伝えておきますね」

 この瞬間、自分のミスに気づいた私は、大きく赤面し、冒頭の妻のツッコミをもらったのでした。

 なぜ、氏子さんの名前が覚えられないのか。

 私が人の顔を覚えるのが不得意だということもありますが、それに加えて、この地域内には、同じ苗字で親戚関係の人が多いのです。

 前述の「小谷野」は、私が宮司を務める川越市某所に多い苗字で、近所を散歩すると、「小谷野」の表札を数多く目にします。

 しかも、です。同じ苗字ということは、親類同士という方も多い。つまり、顔がけっこう似ているのです。

 冒頭の小谷野さんのお2人も、私に言わせれば、瓜2つ。それゆえ間違ってしまったのですが、妻は「全然違うわよ。小谷野Aさんと小谷野Bさんは、髪型や後ろ姿は確かに似ているけど、鼻翼の幅や、口元の雰囲気は全然違うわ。まったく……」と、この時とばかりに悪態をつきます。

 こんなことでストレスを発散してどうするのかと思いますが、本人には悪気はないようです。