知ったかぶりはボロを出すもの
もう1つ、氏子さんの名前を覚えられない理由があります。
氏子さんと対面するのが、基本的に、年に一度だからです。
正月を迎えるにあたり、各ご家庭では、神棚をきれいにして、お札を新しいものに祀り替えます。これを「釜注連」と呼ぶのですが、氏子さんと対面するのは、この受け渡しのときくらいなのです。これでは、とても名前を覚えきれません。
一方で、密に接している100人ほどの氏子さんの顔と名前は一致しています。
まずは、神社の管理を務めてくれる総代さんです。彼らとは、お祭りなどで頻繁に顔を合わせ、会話を楽しんでいます。総代さんの名前が覚えられなくなったら、宮司引退です、はい。
それと、地鎮祭などの外祭の依頼があった氏子さんです。「現金なものだ」と思われそうですが……。
なお、挨拶されて、「誰だろう?」と思ったとしても、「すみません、どなたでしょうか?」とは聞き返しません。相手はなんとも思わないかもしれませんが、万が一、不快な思いをさせたら、と思うと、ひるんでしまうのです。
その結果、知ったかぶりの出番です。私の悪い癖です。
以前、ある氏子さんに、
「宮司さん、こんにちは。先日、神社のお掃除に参加したものです」
と声をかけられたことがあります。
私は、必死にお名前を思い出そうとしますが、わからないものはわかりません。だからとりあえず、
「ありがとうございました。すごくきれいにしていただき助かりました」
と返したところ、
「あ、私は、受付の担当でしたので」
と氏子さんは小首を傾げていました。
知ったかぶりは、相当の確率で、ボロを出すものです。かといって、「どちら様でしょうか」とは言いがたい。では、私はどうすればいいのか!? 何かいい方法がないかと悩んでいる昨今です。(#2に続く)