2020年後半以降の急速な市場拡大により、14億人の生活を変えた中国の格安電気自動車(EV)業界。60万円台半ばという驚異的な価格のメーカーが日本市場参入を視野に入れるなど、生活が一変する“その時”が日本にも迫りつつある。

 中国のIT事情に詳しいジャーナリスト・高口康太氏によれば、そんな中国EV業界も2020年前半までは“オワコン状態”。急激に成長した背景には、EV体験が消費者に浸透しただけでなく、ある“革命”があったという。

たった2年ほどで街中でも当たり前に目にするようになった「EV社会」の中国

◆◆◆

ADVERTISEMENT

“雨風がしのげて荷物が載せられる電動自転車”という絶妙な商品設計

 もう一つ、2020年に起きた“革命”がある。それが小型EVブームだ。前述の体験の良さで売れたEVが30万元(約600万円)以上の中高価格帯なのに対し、その数分の1という低価格帯の販売台数が急増している。牽引役となったのが宏光 MINIEV。50万円弱という激安価格で日本でも話題となった車種だ。

 最低グレードの航続距離はカタログスペックで120km、実際には80km程度しか走れない。エアコンを使えば60kmぐらいが限界となるという。見るからにペラペラな車体といい、定員の4人が乗りこむとぎちぎちに狭い車内といい、普通の車に乗り慣れている身からすると明らかに頼りなさそうに見える。

 だが、このチープな車が売れまくった。2021年にはテスラ・モデル3を抜いて「中国でもっとも売れたEV」の座を獲得、今年中には累計販売台数100万台を突破する見通しだ。

 いったい何が魅力なのか?