エアコンの新製品をいつ告知すべきか
――ツイッターで宣伝するには何が大切なんでしょう。
シャープさん いつ言うか、です。宣伝してほしいとリクエストしてくる人のほとんどが「この商品の発売日はこの日だから、そのタイミングで呟いて」みたいに言うんですけど、大間違いです。いつ発売するかなんて、こっち側、会社の決めた勝手な都合なんですから。そんなこと、お客様には関係ないですよね。だから、例えばエアコンの新製品だったら、告知するベストタイミングは初めて寒くなった日だったりします。「あ、寒くなってきたな」というときに、人の注目は暖房に集まる。それを無視して、会社が言いたいときに言いたいことを呟いたって、誰も共感しません。ネットでものを言うというのは、半分以上タイミングの問題です。
――ということは、ある種のカレンダーのようなものがシャープさんの頭の中には入っている?
シャープさん いえ、むしろカレンダーは作らないようにしています。臨機応変にできるように、その日暮らし。世間の人と同じことが気にできるように、毎日、世間の中にいるようにしています。ですので、僕は半分社員を辞めている感覚です。
――半分だけ、社員を辞める。
シャープさん そうすればお客様目線になれます。ネットは特に客観性がないと信用されない。だからこそ、インフルエンサーにお金を支払って拡散してもらうという、「客観性を買う」という事態が生まれてもいるわけですけど。
注目してもらうためには「佇む」
――出版業界で言うと「たちまち重版!」とか広告を打ちがちなんですが、お客様目線だとどういう風に見られているか考えないといけませんね。
シャープさん 自画自賛になってるとサムいですからね。特にネットではステルスマーケティングが嫌われます。基本的に企業が世の中に対して何かを「仕掛けてる」という行為自体が嫌悪の対象になるんです。問題があきらかになってもう長い時間が経ってると思うんですけど、未だにあまり変わってない気がしますね(笑)。
――そんなネットの厳しい世界の中で、シャープさんみたいにメッセージに注目してもらえるようになるコツって何なんでしょうか?
シャープさん 佇むことじゃないでしょうか。
――佇むんですか。
シャープさん 自分の好きなタレントの発言を読んだり、興味のあるニュースを知るためにフォローするツイッターは、自分で作り上げた「好き」が集積された場所です。そんな世界にあって、企業アカウントは時に宣伝をしてきたり、余計な発言をする邪魔者なんですから、その邪魔は最小限にするべきです。広告の脳みそで考えると、いかにスマホの画面を占有できるかとか、連投すれば存在感出せるとか考えがちですが、逆です。「俺が俺が」の悪目立ちは禁物。フォロワー数、絶対減ります。
――カラオケでもずっと歌い続けてると嫌われますもんね。
シャープさん そもそも、「カラオケに呼ばれていない」というところから始めるべきです。で、場が中だるみしたときに、また盛り上がれるような歌を歌えば「あぁ、お前わかってんな」と(笑)。