住まいは新築・築浅がいい――、日本人の心には、長らくそんな“新築信仰”が根付いていた。しかし近年は築年数を経ていても、管理が行き届き、リフォームされた築古マンションを選ぶ人も増えているという。「ヴィンテージマンション」と呼ばれることもある築古マンションでは、どのような暮らしが待っているのだろうか。

※画像はイメージです ©:iStock.com

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内見してみたら、想像以上の広さに好印象

「年代物」を意味する“ヴィンテージ”という言葉は、時間の経過とともに価値が上がるアイテムを指す。ワインや古着、腕時計などに使われる言葉だが、マンションに使われるケースもある。とくに、80年代に建てられた「広尾ガーデンヒルズ」や「麻布霞町パークマンション」「秀和レジデンスシリーズ」など、有名なヴィンテージマンションは、令和の今も物件の価値がまったく下がっていないという。

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 不動産専門のデータ会社・東京カンテイでは、ヴィンテージマンションを「少なくとも築10年以上経過」「物件の平均専有面積が100㎡前後」「坪300万円以上」と定義しているが、これらの条件に当てはまらなくても、不動産サイトで「ヴィンテージマンション」として紹介されているケースも多い。今のところワインやジーンズとは違い、マンションには明確な定義はないようだ。

 今年2月、桃木彩絵さん(仮名・30代)は都心の駅から徒歩3分の場所にある、築50年のヴィンテージマンションに引っ越したという。

「家族3人で暮らすので、初めは築浅で2LDK以上のマンションを探していました。でもその場合、家賃が30万円を超えるものばかりで、完全に予算オーバー。そこで築年数の条件を緩めてネットで検索したところ、今住んでいるこの部屋が出てきたんです」

 当初、自分よりも20歳も年上の物件に興味は湧かなかったが、そのマンションは2LDKで駅チカ、家賃は23万円と好条件。念のため内見に行くと、居室空間が想像以上に広く開放的で好印象を抱いた。そして彼女は部屋の印象を「シティだと感じた」と話す。どういうことだろうか。

桃木家の専有面積は約90平米で、鉄筋コンクリート造。同じエリアで同条件の物件を探すと、1カ月の家賃が50万円を超えるものが大半を占めていた。