健康で投げている時の大谷は、ダルビッシュや田中と遜色ない
次に投球成績を見てみよう。大谷が通算で1シーズン分くらいのイニング数しか投げていないので難しいが、とりあえず60パーセント以上の登板が先発で、通算150イニング以上投げた投手の通算ERA+で順位をつけた。BaseballReferenceによると、条件に合う日本出身選手が14人いる(表3-13)。
最も良かった年を見ると、次のような順位になる(表3-14)。
規定投球回には到達していないが、大谷の2021年は141、2018年は127と、歴代の日本のエースたちと張り合う数値だ。健康で投げている時の大谷は、ダルビッシュや田中と遜色ない。
最後に、総合貢献度のWARを比較する。これは累計であるため、一般的には長くプレーすればするほど高くなる。Baseball Referenceによると、以下が日本出身選手の通算WAR上位10人である(表3-15)。
通算1位はダントツでイチローの60。メジャー史上でも191位である。投手ばかりが並ぶ中、ひときわ輝きを放っている。
大谷の活躍を「日本人選手」という枠で測るべきではない
そして、こちらが投手と打者のシーズン最多WARの上位10傑である(表3-16)。投手としては岩隈が1位というのを意外に思った人もいるはずだ。2013年の岩隈はメジャー全体で8位、投手としては2位だった。データを見ていると、ただ試合を見ているだけでは気づきづらい選手の活躍が見えてきて面白い。
2021年の大谷は投打を合わせると9・1で、2004年のイチロー(9・2)に次いで2位である。でも、こういう見方もできる。打者・大谷と投手・大谷が別の人物だったら、それぞれ日本人の中ではトップ10入りするくらいの活躍をしたということだ。大谷を「ダルビッシュと松井とイチローを合わせたような選手」と形容するアメリカのファンに何人も会ってきたが、数字もそれを示している。
大谷の活躍を紹介する際に日本メディアがよく使う、「日本人初となる」「日本人ではXX人目」といった表現には、正直、違和感を感じる。これまでの説明で分かるように、大谷の活躍というのは「日本人選手」という枠で測るべき次元ではないのだ。大谷は投打のそれぞれで、メジャーのトップ選手と遜色ない活躍をして、二刀流というメジャー史上でも前例のない偉業を成し遂げている。日本人選手との比較で語るのは過小評価につながりかねない。