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「DJはもういなくなるかもしれませんね…」小林克也(82)が危惧するラジオ界の“今そこにある危機”

ラジオ界のゴッドファーザー小林克也インタビュー#2

2023/05/03

genre : エンタメ, 芸能

note

ゴッドファーザーの答えは……

小林 もう長くは続かないかもしれませんね。アメリカもとっくにそんな時代じゃなくなっているし。昔は地方の放送局からDJが成り上がって億を稼ぐようなサクセスストーリーもあったし、いまも年間契約で多くのレギュラーを持っているDJや、専属のDJを抱える放送局も残ってはいますが、先行きは決して明るくない。

 たとえば中くらいの投資家がラジオ局をまとめて買っちゃったりする。似たような資本に買われると局も番組も差別化がし辛い。向こうではコンピューターが自動で音楽をかけるような放送局も結構出てきているんですよ。天気などのリアルタイム情報はリモートでも対応出来るし、ほとんど人がいない放送局もあるそうですし。

――DJに憧れる後続の世代が途絶えるかもしれない。寂しさはありませんか?

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小林 それはもうしょうがない。面白いクリエイターは自然とホットなメディアに集まるものだから。例えば1980年代の日本はテレビ最後の黄金期だったでしょ? だから糸井重里さんとか川崎徹さんとか優秀な人がテレビや広告の界隈にいた。ラジオにもそういう時代があったけど、いまはそれがYouTuberというだけでね。

©文藝春秋 撮影/石川啓次

――かつて克也さんは自身が独自のしゃべりで一目置く存在として、ビートたけしさんとSMAPの名前を挙げていらっしゃいましたが、最近はどうですか?

小林 僕ももうこの歳なのであまり細かくチェックはしていないけど、昔は既存の価値観を「壊せばいい」みたい風潮がありましたよね。たけしさんやSMAPには良い意味での「壊してやる」という勢いや「文句があるなら辞めてやるよ」と言わんばかりの生意気さがあったよね。

©文藝春秋 撮影/石川啓次

 あと、その頃の彼らはいつどのチャンネルを見ても必ず何処かで目にするくらいの人気者だったよね。そういう存在って、いまはほとんどいないでしょ? どちらかと言えば「壊してやる」よりも「どう上手く活用するか」の世の中だしね。みなさんとても器用だけど、スターが生まれ辛い世の中なのかもしれない。

 ただ、いつの世にも、「自分を出したくて仕方がない人」というのは必ずいる。SNSを活用しつつ、他の音声サービスとどう差別化を図り共存共栄していくのか。新しい個性が現れて、ラジオを活気付けてくれるといいですね。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

「DJはもういなくなるかもしれませんね…」小林克也(82)が危惧するラジオ界の“今そこにある危機”

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