安倍、岸田と「総理」へのテロが相次ぐが、かつて日本中を震撼させた事件があった。「赤報隊」と名乗る犯行グループは朝日新聞阪神支局で記者を射殺、リクルート社や、中曽根、竹下両元総理も標的にした。時効から20年──。犯行直後に「逃走資金」を渡し、その後、リクルート社から1億円を受け取ったと証言する人物がいる。「文藝春秋」取材班による「朝日襲撃『赤報隊』の正体」を一部転載します(文藝春秋2023年6月号)。
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「赤報隊」事件の”新事実”を入手
「赤報隊」を名乗るテロ集団が朝日新聞阪神支局の記者を散弾銃で殺害後、江副浩正元リクルート会長宅を銃撃し、中曽根康弘、竹下登両元首相らを標的に脅迫し続けた「警察庁広域重要指定一一六号事件」(以下、一一六号事件)。のべ62万人の捜査員が動員された一連のテロはすでに時効を迎えたが、本誌取材班は新事実を掴んだ。
言論機関、政財界を激震させた戦後最大のミステリーの真相に迫る――。
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取材班の手元には、一一六号事件で警察庁、兵庫県警が時効前の1998年にひそかに作成した約20冊の分厚い捜査報告書の束がある。
「取扱注意 警察庁指定116号事件」などと記されたファイルの中でも、ひときわ目を引くのが、「重要捜査対象者9人」と題されたリストである。
本誌取材班の成り立ちや、この記事が掲載されるまでの経緯は後述するが、今年1月11日、「重要捜査対象者9人」の中の1人が都内の病院でひっそりと亡くなった。
旧右翼と一線を画し、「反米反共」など民族運動を訴えた新右翼団体「一水会」の創設者として、元朝日ジャーナル編集長の筑紫哲也に対談企画「若者たちの神々」で取り上げられたこともある文筆家の鈴木邦男である。